【オールブラックス来日記念短期集中連載①】世界最強ではなくなったNZ代表の変わらぬ魅力
いよいよ今月末、オールブラックスが2年ぶりにやって来る。10月26日(土)・日産スタジアムでの『リポビタンDチャレンジカップ2024』にて日本代表と対峙するのだ。そこで毎週水曜日にオールブラックスの魅力に迫るコラムを紹介。試合まで全3回の短期集中連載をアップしたい。まず最初にオールブラックスの現在地に迫る。 【PHOTO】ケイレブ・クラーク 残念ながら、今のオールブラックスは世界最強ではない。『ラグビーワールドカップ(RWC)2019・2023』で南アフリカが連覇を成し遂げ、最多優勝記録を更新された。2009年11月から509週連続1位というとてつもない最長記録を打ち立てた世界ランキングでも最新のものでは1位アイルランド、2位南アの後塵を拝す3位に甘んじる。8月から9月にかけて行われた南半球最強決定戦『ザ・ラグビーチャンピオンシップ』では南アに連敗、アルゼンチンにも1勝1敗、ニュージーランドは3勝3敗に終わっている。 確かにかつての無双ぶりは影を潜めている。だが、しかし、それでもオールブラックスは輝きを失ってはいない。5大会『ワールドカップ』優勝から遠ざかっていても、ブラジル代表がサッカー王国であるように、ラグビーのアイコンで言えばニュージーランド代表であり、オールブラックスなのだ。試合前のハカもオールブラックスのブランドを高めている。そもそも人口480万人にも満たないオセアニアの島国が世界最強の座に君臨し続けたこと自体、奇跡である。 フィールド上でも唯一無二の存在だ。オールブラックスの語源となったと言われる15人がBKのように俊敏に動き回るスタイルは健在である。フィジカル隆盛、勝利至上主義の潮流にあっても、あくまでトライを目指す攻撃的な展開ラグビーを実践する。アグレッシブなSHとスキルフルでアイデア豊富なSOのハンドリングのもと、パワーを武器とするFWとスピードを誇るBKがボールを前に運ぶ。陣形が乱れてアンストラクチャーとなれば、ショータイムである。確かなスキルを兼ね備えた15人がジャズのセッションのような即興のアタックを奏でる。 オールブラックスには観る者を魅了するスーパースターたちが名を連ねる。問答無用の突破力を見せ付ける2023年ワールドラグビー年間最優秀選手のNO8アーディ―・サベアにHOの域を超えた加速と嗅覚でトライを量産するコーディー・テイラー、突破力と防御力を高いレベルで両立するCTBジョーディー・バレット、爆発的なパワーとスピードを兼ね備えたWTBケイレブ・クラークがズラリ。SOにはFBも兼任するふたりのファンタジスタが共存する。広い視野と研ぎ澄まされた戦術眼から卓越した技術で相手の急所をピンポイントで突くボーデン・バレットと、パスとキックでアタックをリードするとともにスピードとステップと相手の意表を突くアイデアで自ら突破を図るダミアン・マッケンジーである。さらにスコット・ロバートソンHCから新たな主将に任命されたLO/FLスコット・バレットや今ツアーでの代表引退を発表している前主将のFLサム・ケイン、ハカのリーダーでもあるSHのTJ・ペレナラなど、タレントを挙げれば枚挙に暇がない。 10月7日、日本戦を皮切りにイングランド、アイルランド、フランス、イタリアと連戦を行う北半球ツアーに参加するオールブラックスのメンバーを発表。前記のスーパースターを含めた36名のメンバーは以下の通り。 【PR】イーサン・デグルート(ハイランダーズ)28 タイレル・ロマックス(ハリケーンズ)40 フレッチャー・ニューウェル(クルセイダーズ)20 パシリオ・トシ(ハリケーンズ)3 オファ・トゥウンガファシ(ブルーズ)63 タマイティ・ウィリアムズ(クルセイダーズ)14 【HO】アサフォ・アウムア(ハリケーンズ)15 コーディー・テイラー(クルセイダーズ)93 ジョージ・ベル(クルセイダーズ)1 【LO】スコット・バレット(クルセイダーズ)76 トゥポウ・ヴァアイ(チーフス)34 パトリック・トゥイプロトゥ(ブルーズ)46 サム・ダリー(ブルーズ)5 【FL/NO8】イーサン・ブラッカダー(クルセイダーズ)15 サム・ケイン(チーフス/東京サントリーサンゴリアス)100 サミペニ・フィナウ(チーフス)4 ルーク・ジェイコブソン(チーフス)24 ダルトン・パパリィイ(ブルーズ)36 アーディー・サベア(モアナ・パシフィカ)90 ウォレス・シティティ(チーフス)5 【SH】キャム・ロイガード(ハリケーンズ)5 TJ・ペレナラ(ハリケーンズ/リコーブラックラムズ東京)87 コルテス・ラティマ(チーフス)8 【SO】ボーデン・バレット(ブルーズ)131 ダミアン・マッケンジー(チーフス)56 【CTB】ジョーディー・バレット(ハリケーンズ)65 デービッド・ハヴィリ(クルセイダーズ)28 リーコ・イオアネ(ブルーズ)77 アントン・レイナートブラウン(チーフス)79 ビリー・プロクター(ハリケーンズ)1 【WTB/FB】ケイレブ・クラーク(ブルーズ)25 ウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)37 ルーベン・ラヴ(ハリケーンズ)0 スティーヴン・ペロフェタ(ブルーズ)5 セヴ・リース(クルセイダーズ)30 マーク・テレア(ブルーズ)15 ※所属クラブの後の数字はキャップ数。 上記メンバーの一部は日本戦を前に欧州遠征へ移動するとのこと。また11月に欧州遠征を行うオールブラックスXVのメンバーから数人がオールブラックスに帯同することも発表された。 メンバーを選出したロバートソンHCはこうコメントした。 「テストマッチはどの試合も重要。これからの試合はすべてがこの1年で最大の試合になる。北半球ツアーは私たちにとって非常に重要。大きな舞台には大きなチャンスがあり、選手たちがどのように活躍するか問われる。選手たちがチャンスを楽しみにし、素晴らしいパフォーマンスを披露する環境を作っていきたい」 指揮官は今ツアーでの黒衣を脱ぐケインとペレナラの選出についても言及している。 「経験があること、テストマッチに適応していること、リーダーシップがあることは北半球ツアーで勝つために重要。彼らはそうした資質を多く持っている。彼らは今年のテストマッチでもいいパフォーマンスを見せた。(SHの)キャムとコルテスは数回しかテストマッチに出ていないが、TJがチームにバランスをもたらしてくれるだろう」 果たして、日本代表が8度目の挑戦で初の快挙を成し遂げるのか、オールブラックスがオールブラックスたる所以を披露するのか。『リポビタンDチャレンジカップ2024』日本代表×NZ代表は10月26日(土)・日産スタジアムにてキックオフ。日本代表のメンバーは10月10日(木)に発表予定。チケット発売中。