ただの失敗と優れた失敗...「優れた経営者」だけが知っている「失敗から学べ」の本当の意味
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第29回 『「航空機事故」の「驚くべき原因」を解き明かす米国人気番組...そこから学ぶ「信念と失敗への向き合い方」』より続く
確実な成功などない
前々回の記事で例に挙げた「事例病」にかかっていると、とにかく、行動できなくなります。それは「事例の中から成功した理由」を探すからです。 成功の理由はさまざまです。天の運、地の運、人の運というほどに、多様な条件が重なって成功しています。その条件を一つに絞ることなんて無理ですし、再現することも困難です。 何よりも、ただ同じ条件を揃えたからといって、成功するとは限りません。なぜならば「時」が違うからです。成功例があるということは、先行者がいます。そこで同じことを繰り返しても、もはや条件が異なっています。 よく、失敗から学べ、と言われますが、多くの場合、それは「他人の失敗」から学べという話です。それに加えて、私は、自らの失敗から学ぶべきだと考えています。わざと失敗するのはお勧めしませんが、当たり前にビジネスに取り組むと、失敗も当たり前に起こります。
失敗しなければわからないこともある
マーケティングの世界でも、失敗は当たり前です。その確率を減らすために、全力で頭を使っています。その知識の源泉こそ、過去の失敗です。 そもそも、マーケティング施策でAという方法とBという方法がある場合、どちらが正解なのか、効果が上がるのか、「やる前にわかるはずがない」のは当然です。誰も未来予知はできません。誰にでも「それは失敗するだろう」とわかるようなことは、過去に先人が山のように失敗してきたことであり、そもそも選択肢となり得ません。だから、普通、マーケターは「ABテスティング」をします。AとB両方を実行してみて、どちらがより効果が出るかをたしかめるのです。「正解は市場が決める」ということです。 「過去にこうやったら失敗した」経験はもちろんですが、その失敗の理由を分解して整理できていると、「改善」ができます。過去に失敗したものでも、その原因を排除し改善すれば、成功に至る可能性があります。 失敗したからといって捨てるのではなく、分析することが重要です。科学的な視点、手法でビジネスに取り組むことは、失敗を失敗に終わらせないということを意味します。多くの優れた起業家、経営者は、失敗を実験結果の一つと認識します。 『企画の中身はそっちのけ⁉...アメリカの投資家に評価される、日本では「ありえない」起業家の素質』へ続く
山川 恭弘