咬まれたら即入院!? 日本で最も被害件数が多い毒ヘビ・マムシの「生態と対策」
攻撃的ではないが強い毒をもつマムシ
マムシは体長40~60cm。胴が太いずんぐりむっくりの体形で、一般的に「銭形模様」と呼ばれる模様をもちます。山地や里山に生息し、おもにカエルやネズミなどを食べています。 「人を襲うために向こうから近寄ってくることはありませんが、強い毒があるので要注意です。被害件数は年間1000~3000件で、例年平均4~5人程度が亡くなっており、日本の毒ヘビの中で最も死亡者数が多いヘビです」(西海さん) 毒はいわゆる出血毒で、筋肉の融解を引き起こし、患部は強く腫れます。 「咬まれると基本的に入院となり、重症の場合は組織障害や腎機能障害などの後遺症が出ることがあります」(西海さん) マムシを見かけたときに、ほかのヘビとの区別はつくのでしょうか。 「体色は茶色が一般的ですが、地域により赤茶色、灰色、黒などの変異があります。また、黒い線の中に目があるような模様も特徴的です。ただし、慣れていないと見間違えることがあり、無毒のヘビと間違えてつかみ、咬まれる事故が起こった例もあります」(西海さん) 触らぬ神にたたりなし。自分の判断を過信せず、不用意に近寄ったり触れたりするのは避けたほうがよさそうです。
温度を可視化するセンサーをもつマムシ
西海さんによると、マムシに咬まれるパターンはおもに次の3つだそうです。 1.ちょっかいを出して咬まれる 2.作業をしていて咬まれる 3.散歩中に咬まれる 「とくに3については、サンダルで犬の散歩をしていたら咬まれた、というのが典型例です」(西海さん) 待ち伏せ型の狩りをするので、落ち葉の上などにいると見分けにくく、誤って踏んだり、近くに足をおろしてしまうこともあるのだそう。靴を履くだけでも被害の予防効果があるとのこと。 「マムシの毒牙の長さは約4mm。一般的なスニーカーや登山靴はそれ以上の厚さがあるので、万が一咬まれても皮膚に届きにくくなります。また、長ズボンをはくだけでも事故予防に一定の効果が期待できます」(西海さん) 肌を露出しないことにも大きな意味があるとのこと。 「マムシやハブには『ピット器官』というセンサーがあり、サーモグラフィーのように体温を可視化して認識できます。つまり、肌を露出していると暗闇でも丸見えなんです」(西海さん) マムシに手袋を近づける実験をすると、それだけではあまり攻撃してこない、ということが起こるのだそうです。 「体温を見せる状態は、彼らが“咬む”という行動を起こすトリガーになります。ソックスが短かったりして、素肌が見えているとそこが狙われます」(西海さん) アウトドアや農作業などの野外活動で「肌の露出を控える」のは、擦り傷などのケガだけでなく、マムシ対策としても有効なようです。