元気の秘訣は、「時々自分を省みて、今の状態は居心地がいいのかを問うこと」【養老孟司×和田秀樹】
『80歳の壁』著者・63歳和田秀樹が、”長生きの真意”に迫る対談連載企画「医者ではなく、大先輩に聞け!」。初回ゲストは解剖学者・86歳養老孟司。『バカの壁』と『80歳の壁』。記録的な大ヒット本を生んだ二人に共通する人生哲学とは。話の随所から、楽に生きるためのヒントが飛び出てきます。その第4回。 【写真】「努力したから成果が得られた」ではなく「いつのまにかうまくいった」がいい【養老孟司×和田秀樹⑤】
みんなが居心地のいいところにいれば、社会は自然に安定する
和田 最近は虫を捕りにどちらに行かれたんですか? 養老 屋久島です。 和田 会いたい虫がそこに? 養老 ちょっとマニアックな話になるけど、ヒゲボソゾウムシっていうのがいるんですよ。 和田 ゾウムシ? 養老 そう。ヒゲボソっていう北の虫で南に行くといなくなる。屋久島はその南限に近いんです。そこに1種類いるからその写真を撮りに行ったんです。 和田 会えたんですか? 養老 会えなかった。いるのはわかるんですよ。でもトラップを仕掛けて捕るのは嫌なんだよね。それだと普段どういう所で暮らしてるかわからないから。 和田 生息してる場で捕りたい。 養老 そうそう。昨年ゾウムシの専門家が生け捕りに成功して、食ってる木がわかった。イソノキという常緑樹。だから今回はイソノキばかり見て歩いてました。イソノキの葉を食べるんだけど、背が高い木なので葉も高い所にある。18mの虫網で捕るんだけど見たことないでしょ? バズーカ砲みたいなもん(笑)。僕はそんな長竿を持つ体力がないから若い人に一緒に行ってもらうんです。 和田 でも捕れなかった? 養老 残念ながらダメ。だけどなんでもないですよ。また屋久島に行く理由ができた(笑)。 和田 コロナの間は虫捕りには出なかったんですか? 養老 出ませんでしたね。僕はクルマを運転しないからドライバーがいないとダメなんで。でも若い人が「こんな時に年寄りを連れて出歩くわけにはいかない」と遠慮しちゃう。僕は構わず行きたかったんだけど(笑)。 和田 なるほど。養老先生がコロナを怖がって虫を捕らなくなるとは思えなかったので。理由を聞いて納得しました(笑)。 養老 コロナを怖がり大人しくしていたわけじゃない(笑)。 和田 虫捕りは体力的にきつくないですか。やはり好奇心が? 養老 そうです。やる気ですね。 和田 年を取っても、やる気は保ち続けられるものですか。 養老 そうですね。人のことはわかりませんけどね。 和田 やる気の波は? 養老 ありますよ、それは。ただ、本当に虫は多様だから対象はその時々で違うんです。その時に追いたいものを追いかける。選択肢の幅が広いんです。 和田 そういえば宮崎駿さんがアカデミー賞を受賞されました。引退を宣言したけど2年くらいで「どうしても映画を撮りたくなった」と戻ってこられた。やっぱり心から好きなんですね。名誉のためじゃないから、受賞しても一切顔を出さない。情熱が人を動かす。宮崎さんをご存じですか? 養老 はい。何度か対談もしています。 和田 相通じるところは? 養老 似たようなもんですよ。