「1位確実」のタレント不在の中で突き抜ける逸材は? 例年以上の混戦模様の25年ドラフトの“1位指名候補”を予測
高校球界には投手の好素材がひしめく
また、投手では東京六大学通算13勝2敗(11月4日終了時点)という抜群の成績を残している伊藤樹(早稲田大)が実績ではリードしている印象を受ける。その中で伊藤以上の評価を受けそうなのが、堀越啓太(東北福祉大)と高木快大(中京大)だ。 堀越は練習では160キロを超える球速を記録する本格派サイドスロー。実戦でもコンスタントに150キロ台中盤をマークし、躍動感あふれるフォームから繰り出すボールの勢いは目を見張るものがある。この秋は変化球もレベルアップし、5試合、12回を投げて自責点0という見事な成績を残した。 基本的にリリーフでの起用という点がどう評価されるかが難しいところだが、本人が目標と話している大勢(巨人)の大学時代と比べてもあらゆる点で上回っているように見えるだけに、十分1位も射程圏内と言えそうだ。 一方の高木は愛知大学リーグを代表する本格派右腕。今年春のリーグ開幕戦では完全試合を達成すると、続く大学選手権でも強豪を相手に好投し、大学日本代表として国際大会でも結果を残した。真上から投げ下ろすフォームでイメージは森下暢仁(広島)と重なる。 高い位置からリリースしながらも、ボールのホップ成分はかなり多いとのことで、数字以上の勢いが感じられるのが長所だ。秋は故障もあってシーズン途中で離脱したが、短いイニングでは150キロも超えるスピードもマークしており、順調にいけば来年の有力候補となる可能性は高い。 高校球界はどうか。投手に好素材がひしめく中で1位候補となりそうなのが、石垣元気(健大高崎)と芹沢大地(高蔵寺)。 石垣は入学当時から投手陣の一角に定着し、今年春の選抜高校野球でもチームの優勝に大きく貢献。ストレートはコンスタントに150キロを超え、スピードに関しては歴代の高校生投手の中でもトップクラスである。 春まではスピードはありながらもとらえられることが多かったが、秋の新チームからは変化球の制球力もアップした印象を受ける。チームは関東大会の決勝で敗れたものの、2年連続の選抜出場は確実な状況で、甲子園でどこまで成長した姿を見せてくれるかが楽しみだ。 芹沢は愛知の公立高校で注目を集めているサウスポー。まだまだ身体は線が細いものの、柔らかい腕の振りで球持ちが長く、145キロ前後のストレートは数字以上の勢いがある。また、高校生左腕ながらコーナーに投げ分ける制球力とスライダー、チェンジアップなどの変化球のレベルも高く、球数を抑えながら三振を多く奪えるのも魅力だ。 侍ジャパンの井端弘和監督も夏の大会でその投球を視察しているというところにも、ポテンシャルの高さがうかがえる。フィジカル面の強化は必要だが、順調にいけば上位候補となる可能性は極めて高いだろう。 社会人は現時点で1位候補と呼べる選手は不在という印象だが、今年もそう言われながらも竹田祐(三菱重工West→DeNA1位)、伊原陵人(NTT西日本→阪神1位)と2人の投手が1位指名を受けている。それだけに、来年一気に評価を上げてくる選手が出てくることを期待したい。 文●西尾典文 【著者プロフィール】 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。