週2Lの“甘い飲み物”で「不整脈」リスク増加、甘味飲料の飲み過ぎに要注意!
心房細動とは?
編集部: 今回おこなわれた研究のテーマとなった心房細動について教えてください。 甲斐沼先生: 心房細動は、いわゆる「不整脈」のことです。心房の収縮が十分おこなわれず、痙攣(けいれん)するかのように細かく震えることで、脈が不規則になって起きる病気です。主に、息切れや倦怠感、動悸などの自覚症状があります。 心房細動には、症状が起きる時間で2つのタイプに分けられています。短時間だけ起こる「発作性心房細動」と、長時間続く「持続性心房細動」です。短時間で起こって元に戻る発作性心房細動の人は自覚症状がない場合や、健康診断でおこなわれる心電図などの短時間の検査では見つからない場合もあります。また、心臓の血液を一定方向に流し、逆流を防ぐ役割を持つ「弁」に異常があるかどうかでもタイプが分けられます。弁に異常がみられないものは「非弁膜症性心房細動」、弁の異常が原因となるものは「弁膜症性心房細動」と言います。 心房細動が原因で心房内の血液が淀んでしまうと血栓ができます。そして、血栓が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせると脳梗塞が起こってしまいます。心原性脳塞栓症と呼ばれる病気ですが、一般的な動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞と比べて、大きな血管が突然閉塞します。大きな脳梗塞を起こして死亡に至るケースもあるので、注意が必要です。
今回の研究内容への受け止めは?
編集部: AHAが学会誌に掲載した研究内容への受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: これまでの研究結果からは、心房細動の発症リスク因子として肥満、糖尿病、心不全、中~重度のアルコール依存症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、慢性腎臓病、虚血性心疾患、高血圧、加齢などが知られていました。 今回の上海交通大学医学部らによる研究結果のみに基づいて、甘味飲料の飲みすぎそのものが心房細動を発症する危険性を上げているかどうかに関しては確固たる断言はできません。ただ、砂糖や人工甘味料入り飲料を好む人たちに共通する何らかの交絡因子が、心房細動の発症リスクを上げている可能性が検討されます。 ただし、将来的に心房細動に起因する重大な脳梗塞を発症して、要介護状態になるリスクを少しでも減少したい場合には、本研究の成果を受けて、人工甘味料や砂糖の入った飲料の摂取をできるだけ減らすか、摂取しないことを勧めるという考え方になるのが自然だと思います。