政治家は落選したらタダの人、では在職中の特権は?国会議員は年収2000万円超、交通費1200万円、JR無料パスも
■ 国会議員が持つ3つの特権 選挙に落ちた国会議員が「タダの人」だとすれば、議員在職中は一般人には持てない“特権”を有していることになります。では、国会議員ならではの権利には、どのようなものがあるのでしょうか。 1つ目は「不逮捕特権」で、日本国憲法第50条に定めがあります。国会議員は国会の会期中は逮捕されず、国会前に逮捕された場合でもその議員が所属する議院の要求があれば釈放しなければなりません。不逮捕特権は、国家権力が反対派議員を逮捕して国会から排除したり、議員の職務を妨げたりすることのないよう、「議会の独立・自律」を保障するためのものです。 2つ目は「免責特権」、あるいは「院外免責特権」と呼ばれるもので、憲法51条に規定があります。国会議員は、国会内で行った演説や討論、表決について、名誉毀損などの責任を問われません。これは、国会議員による自由な言論や国会活動を保障するためのもの。民主政治の根本は言論の自由です。したがって、免責特権は不逮捕特権と一体となり、国会議員が外部から妨害されずに審議することを保障しているのです。 最後の3つ目は「歳費特権」です。国会議員の給料は「歳費」と呼ばれ、国庫から支給されます。歳費の額は一般職の国家公務員の最高給与額より少なくない金額とされています。その他にもさまざまな名目で資金やそれに類するサービスが支給・提供されています。 近年、議論になっている特権とは、この歳費特権を軸にした“国会議員の待遇”に関するものが大半ですが、国会議員は本当にそんなに恵まれているのでしょうか。見ていきましょう。
■ 国庫からの歳費や活動費は議員1人当たり4000万円超 衆院議員・参院議員の歳費(給与)は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」によって定められています。それによると、議員1人の歳費月額は129万4000円、年額では1552万8000円です。これに期末手当(賞与)が年間で635万円加わりますから、総額は約2187万円となります。 議会での役職がつくと月額は上昇し、副議長は158万4000円、議長は217万円になります。かなりの高額に思えますが、2022年4月、衆院の細田博之議長は参議院議員のパーティーで「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかない。上場会社の社長は、1億円は必ずもらう。普通の衆院議員は手取りで70万、60万くらい」と言い放ち、強い批判を浴びたことがあります。 国会議員は、歳費以外でも恵まれていることで知られています。 まず、「調査研究広報滞在費」(旧名:文書通信交通滞在費、略称:文通費)です。正副議長を含むすべての国会議員に毎月100万円支払われています。本来は、議員活動に要した経費に使うものとされていますが、使途の公開や領収書提出の義務がないため、実際の使い道は闇に包まれたまま。議員の裁量で自由に使えるとあって、永田町では「第2の議員歳費」と呼ばれています。 「立法事務費」も議員側に支給されています。議員1人あたり、月額65万円(年額780万円)が会派に提供されます。議員個人に直接渡されるわけではありませんが、これも使途の公開が義務付けられていません。 交通費に関する手当もあります。 よく知られているのはJR全線を対象とした無料パスです。しかも、グリーン車も乗り放題。現在は人気コメンテーターになった杉村太蔵氏がかつて26歳で衆院議員になった際、はしゃぎながら「(国会議員は)JR乗り放題らしいですよ。しかも全部グリーン車」と発言し、物議を醸したことがあります。 その制度は現在も変わっておらず、国会議員は地元と東京を往復する手段として(1)JR無料パス (2)JRパスおよび1カ月当たり東京・選挙区間3往復分の航空券引換証 (3)1カ月当たり東京・選挙区間4往復分の航空券引換証―のいずれかが支給されることになっています。 ただし、JRや航空会社が無料でこれらのサービスを提供しているわけではありません。無料パスなどの費用は国庫からJR・航空会社に支出されており、その額は1年間で十数億円に達しています。 このほか、国会議員には都心の一等地に安価な「議員宿舎」が用意されています。千代田区麹町の宿舎は2LDKで月額9万円足らず。また公設秘書2人分の給与も国庫から支払われます。