クルマ好きには「サイコー!」だけど普通の人は「うるさっ!」 スーパーカーの排気音はめちゃめちゃ大きく感じるけどなぜ車検に通る?
純正マフラーであの爆音はどうしてOKなの?
クルマ好きから言わせてもらうと、最近いい音(エキゾーストノート、排気音)をさせているクルマがずいぶん減ったな、と思う。 【画像ギャラリー】最高の音を奏でるスーパーカーのエキゾースト ハイブリッド車やEVが増えているので当たり前と言えば当たり前だが、ときどき「あ、いい音」と振り返ると、大型バイクだったり、海外のスーパーカーだったり……。 そうしたスーパーカー、音質はグッドでも、音量もなかなかのボリュームで、「あれで保安基準がクリアできるのか?」とちょっと疑問に思うことがあるのだが、まさか輸入車やスーパーカーに限り、音量基準が甘いのだろうか? 結論から言うと、もちろんスーパーカーに限り音量規制が甘いなんてことはあり得ないわけだが、じつはスーパーカーに有利な条件が一点だけある。 それはエンジンの搭載位置によって、音量の上限が異なるところ。 保安基準の音量規制値は、クルマの年式によっても何段階か基準があるが、現行車の場合、乗用車(定員6人以下)の新車時の近接排気騒音は91dbまでとなっている。 ただし、これはフロントにエンジンを搭載しているクルマのケースで、ミッドシップやRRなど運転席の後ろにエンジンを有するクルマは95dbまでOKとなっている(エンジンが後ろにあるクルマは、排気系レイアウトのスペースが限られてしまうのと、検査時にエンジン本体が発する音も拾いやすいためだと思われる)。 音量は、発生源から2m離れると6db減衰するといわれているので、ミッドシップ・RRに許された+4dbがどれだけアドバンテージになるかは疑問だが、スーパーカーに多いミッドシップやRRは、若干大きな音でも許されているのはたしかだ。
止まってる状態だとじつはあまりうるさくない!?
また、車検=継続審査の際の音量測定では、マフラーの経年劣化等を考慮して「新車時の近接排気騒音(車検証等に記載)に5dB を加えた値以下であること」(平成28年騒音規制)が条件になっている。 したがって、ミッドシップやRRなら、近接排気騒音が100db以下なら、継続審査=車検を合法としてクリアできるというわけだ。 さらに、この近接排気騒音は、暖機運転が終わっている状態のクルマのマフラーの出口から45度の角度で50cm離れた位置へ計測器を置き、停止状態でギヤをニュートラルにしてエンジンをまわし最高出力を発揮する回転数の75%で5秒間保持し、最大値を測定するのがルール。 ピークパワーを7500回転で発生させるエンジンなら、5625回転で測定するわけだが、停止時でギヤがニュートラルであれば、5000回転でも6000回転でほとんど負荷はかかっておらず、アクセル開度もかなり低い状態。 サーキットで全開全負荷でフル加速するときは爆音だとしても、この近接排気騒音を測定する条件下では、100dbに達することは稀なので、加速中の音を聞くと「大きな音だな」と思うようなクルマでも、保安基準はクリアしている適法車がほとんどだ。 さらに、純正マフラーに音量を切り替える可変バルブがついている車種もあり、スポーツモードに切り替えない限り、かなり静かだったりもする。 もっとも、今後は一段と厳しい音量規制(フェーズ3)の導入が見込まれているため、スーパーカーならではの甲高い咆哮は、絶滅危惧種になっていく可能性は否めない……。
藤田竜太