ECB、利下げ開始後は米金融政策の動向次第か-米経済の影響免れず
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)は初回利下げの時期について、米連邦準備制度理事会(FRB)を手掛かりにすることはないと主張している。しかしその後の政策軌道は、米国の動向に左右されるかもしれない。
世界最大の経済大国のトレンドが他の地域に波及するのに時間はかからない。金融環境や為替レートはほぼ即座に影響を受け、続いてインフレや貿易など、その他の指標に影響が広がっていく。このため自国・地域の経済を判断する際、政策当局者は米国の引力から逃れることはできない。
積極的な金融引き締めをいつ、どの程度のペースで、どの程度巻き戻すかを議論するために来週集まるECB当局者も、米国を注視せざるを得ない。
ダンスケ銀行のチーフストラテジスト、ピエト・クリスティアンセン氏は「ECBはもちろんFRBより先に動くことができる」が、「例えば9カ月先などより長期で政策が乖離(かいり)するとは想像しがたい。FRBのいかなる決定も、最終的には欧州に波及し、影響がユーロ圏に及ぶからだ」と述べた。
ラガルド総裁率いるECB政策委員会は、物価上昇圧力が急速に和らぐ中、6月6日の最初の利下げに向けて市場の地ならしに着手した。パウエルFRB議長と歩調を合わせたがっているとの見方は強硬に否定しつつ、最初の一歩を踏み出した後のことについては確約せず、経済データ次第だとしている。
トレーダーはECBが今年中に4回の利下げを実施する可能性が高いとみる一方、FRBの利下げが2回になるか3回になるかについては、パウエルFRB議長が3日、利下げ開始を急ぐ必要はないと繰り返したことで意見が分かれている。
米利上げサイクルが始まってから2年以上が経過したが、米経済は驚くほど底堅く、雇用は依然として堅調に推移している。この強さが持続すれば、冬場の景気後退(リセッション)を辛うじて回避したに過ぎない欧州経済も下支えされる可能性がある。
最近のデータによれば、欧州でも回復の兆しが見え始め、購買担当者指数(PMI)と景況感指数が上向いている。一方、3月のインフレ率は予想以上に鈍化し、2.4%とECBの目標に近づいた。