半世紀の進化に疑問! 1970年代の贅沢 プジョー604 TI デイムラー・ソブリン S2 4.2(2)
細部まで作り込まれたソブリンの車内
今回のプジョー604 TIは、シートがレザー張り。読書灯やヘッドレストが備わり、フロント側と負けないくらい、リアの快適性にも配慮されている。座面は大きく、適度にソフトで、座り心地も優れる。着座位置はやや低めだが、問題なほどではないだろう。 【写真】1970年代の贅沢 プジョー604 TI デイムラー・ソブリン S2 4.2 同時期の他社サルーンも (119枚) 他方、ジャガーXJ6 3.4では標準装備だったクロスの内装は、XJ6 4.2ではオプション。上級のデイムラー・ソブリン S2 4.2でも、シートはレザー張りが標準だった。 前席側は、足元も頭上も、空間は狭め。弧の連続する長いボンネットが、低いフロントガラス越しに広がる。シートの仕立ても604の方が豪華といえるが、横方向のサポート性は悪くない。 少し合理化が図られた中期のS2では、ダッシュボード上のスイッチが省かれ、ステアリングコラムからレバーが伸びる。操作性は良く、細部まで作り込まれた感を漂わせる。ピラーは細く、全方向の視界は良好だ。 604のダッシュボードは、複雑な造形のプラスティック製。ガラス越しにメーターが配され、スイッチ類の配置が個性的に映る。着座位置はソブリン S2より高めで、前方にフラットなボンネットが見える。スクエアな形状で、四隅の位置は掴みやすい。 車重は、604 TIの1451kgに対し、ソブリン S2は1678kg。172psと31.8kg-mを発揮する4.2L直列6気筒エンジンが、この重量差を埋める。美しい加工が施されたカムカバーや、その横に整列する2基のSUキャブレターも、有能ぶりを物語る。
機敏なコーナリングにしなやかな乗り心地
どちらも不安感なく運転できるが、アクセルペダルの反応の正確さや、ブレーキペダルの調整のしやすさでは、ソブリン S2の方が勝る。604のブレーキ・サーボは、線形的にアシストしてくれない。 加速も、ソブリン S2の方が威風堂々。トルクの山は低回転域にあり、3500rpm以上回しても余り意味がない。エンジンノイズが大きくなり、平穏な車内を乱してしまう。 604 TIの2.7L V6エンジン、インジェクション化されたPRVユニットはシルキー。軽快に吹け上がり、心地良いサウンドを奏でる。ATは比較的キビキビとギアを切り替え、想像より活発な印象を生む。 ステアリングは適度に重く、感触も充分。フロントは軽く、前後のシャシーバランスに優れ、ひと回り小さく軽いプジョーのように小気味よく扱える。 連続するカーブを機敏に縫っていくマナーと、しなやかな乗り心地という組み合わせは、目からウロコ。その後の半世紀に遂げた、ビッグサルーンの進化へ疑問を抱くほど。この印象のカギが、プジョーがこだわったダンパーと肉厚なブッシュにある。 他方のソブリン S2は、ツインダンパーと入念に設計されたリア回りで、一層上質。ロールやピッチといったボディの動きも、巧みに抑え込まれている。604 TIより積極的に運転しても安定感が高く、快適性も保たれる。 ただし、ステアリングホイールには余り感触が伝わらない。コーナーを急いで旋回したい場合は、アンダーステアへ転じる限界を予想する必要がある。