【家入レオインタビュー】「“ずっと歌い続けたいです”って簡単には言えなくて」音楽と真摯に向き合う家入レオの今
「今、本気で音楽に向き合ってるんです」 インタビュー中、彼女は何度もそう口にした。 ここ数年、楽曲制作やライブのたびに自分の “歌う意味”を追求し、心の根底から湧き出るメロディと言葉を紡いできた家入レオ。このたびリリースする松本まりか主演のドラマ「ミス・ターゲット」の主題歌「ワルツ」も、ドラマで描かれる真のテーマや出演者の思いをなぞりながら、自身のリアルな恋愛観を投影した逸曲となった。 【全ての写真】家入レオの撮り下ろしカット(全11枚) 実力と活動歴を持っていながら、こうも音楽をやることの喜びと責任の間で揺れながら歌い続けているアーティストがほかにいるだろうか。でも、家入レオは、その揺れとともに歌を研ぎ澄ましてきたのだ。早くも代表曲の仲間入りを予感させる今作はもちろん、秋に予定されているツアーでも、音楽に対して妥協も油断も許さない彼女が放つ圧倒的なエネルギーを感じさせてくれるだろう。 ──ニューシングル「ワルツ」はドラマ「ミス・ターゲット」の主題歌ということで、ドラマの内容に沿うように詞曲を作っていったそうですね。 はい。ドラマの主題歌を歌わせていただくのも「空と青」ぶりだから3年ぶりですし、自分にとってもずっと配信が続いていて、CDシングルリリースは久しぶりなので、絶対にいいものを届けたいという気持ちがいつも以上にあったんです。主演の松本まりかさんもお芝居をはじめて24年で初めて地上波全国ネット連続ドラマの主演ということで、並々ならぬ熱意を持っていらして。ドラマの制作サイド含め、それぞれが強い想いを持って挑むこの「ミス・ターゲット」というドラマに音楽で参加させていただけて、すごくうれしかったです。 ──「ミス・ターゲット」はコメディ寄りなのかと思いきや、1話から悲しい結末になることがわかる作りになっていて、楽曲との相性もピッタリでした。結婚詐欺師の本気の恋愛というのも難しいテーマだったんじゃないですか? そうなんです。主人公のすみれさんは結婚詐欺で、思わせぶりなことを平気で言う人なんですけど、好きになった男性にはそれが通じないんです。本当の恋を知ったすみれさんがこれからどうなっていくのかというストーリーなんですけど…百戦錬磨の結婚詐欺師が傷つくというのが、すごく尊いことだなと思ったんです。気持ちがないから思わせぶりなことも言えるし、その相手がどこかへ消えても、もともと自分の世界に存在していないから、気にもならない、傷つかない。でも人を好きになると、相手のことを気にかけるし、ちゃんと傷つくんですよね。つまり、傷つくとか不安になるって悪いことのように思えるけど、イコールすごく相手のことを大切に思ってるからで。そういうピュアな恋心を歌にできたらいいなと思いました。 ──そして今回の歌詞では、「終わっていく恋」の痛みと引き換えに「残っていく愛」が描かれています。でも、好きだった気持ちは形を変えていくから、その当時の気持ちを綴るのって時間が経てば経つほど難しいことだと思うんですよね。今回の歌詞は、レオちゃんにとってすごくフレッシュな感覚なのかなと思うくらいリアルでした。 面白いことに、別のインタビュアーの方には「失恋した直後だと気持ちの整理がつかないから時間が経ってから書いた曲ですか?」って聞かれて。本当、聴く人それぞれの解釈があるんだなあって今思いました(笑)。私にとって作詞や作曲は……いわばセラピーなんですよね。自分の胸に渦巻いてる悲しさや苦しさとかの感情を、言葉にできないけどメロディにする。で、たぶんこのメロディは私のこういう気持ちを呼んでいたんだなって、歌詞を書いていく。だから一曲できあがったときに、「私はこんなふうに感じてたんだ」って答え合わせをするようなところがけっこうあるんです。今回も「ミス・ターゲット」をきかっけに、自分の恋愛観だったり失ったものについて考える機会をもらった感じなんですよね。こんなに純粋に失恋ソングを書いたのは初めてだと思います。