キム・スヒョン“フォン”が噛みしめる勝利の味はあまりに苦い… 多くを失って取り戻した、あるべき未来<太陽を抱く月>
キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いた作品だ。本記事では、同番組の第20話で描かれた、イ・フォン(キム・スヒョン)とホ・ヨヌ(ハン・ガイン)が迎えた新たな未来について振り返る。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】キム・スヒョン“フォン”とチョン・イル“ヤンミョングン”の剣が向かう先 ■動乱の渦中、イ・フォンとヤンミョングンの争いの行方 講武に向かうべく歩き始めたイ・フォンたちを、ヤンミョングン(チョン・イル)たちの作戦通りに兵士が取り囲む。その中心でイ・フォンとヤンミョングンは互いに剣を抜き、その切先を向け合う。そのときヤンミョングンの脳裏には、以前イ・フォンへ刃を向けたときの一幕が浮かんでいた。 王を斬る機会を与えると語ったイ・フォンに対し、思いとどまって刃を振るわなかったヤンミョングン。2度と同じ機会を望むなと言われたヤンミョングンは、しかし「いや、別の機会があるでしょう。それは謀反の時です。その時どう行動するか――試したかったのでは?」と怯むことなく王の真意を尋ねる。 そしてヤンミョングンは、そのときイ・フォンから返ってきた答えを思い返しながら刃を振るう。その標的は、ユン・デヒョン(キム・ウンス)ら謀反を企てた者たちだ。イ・フォンは真意を尋ねるヤンミョングンへ、たしかにこう告げていた。「狩りをします。ヨヌを呪った者とそれで欲を満たした者たち、無実の犠牲者を生み――国と民衆よりも利益を優先する臣下たち。それらを一網打尽にします」。 イ・フォンはユン・デヒョンらが謀反を計画してヤンミョングンを訪ねるだろうということも想定していた。そして何が望みなのかと問うヤンミョングンに、謀反者の名簿が必要だとも語る。己の欲のためには王をも害そうというすべての輩を抹殺しなければ、ホ・ヨヌは生涯危険と隣り合わせに生き、この国の滅亡を招くだろうと考えていたイ・フォン。初めて真意を漏らした王に、ヤンミョングンは「私を信じてもいいのですか?」と問う。イ・フォンはすべての作戦を明らかにしたうえで、「選択はお任せします」とだけ告げるのだった。 決別したかに見えた義兄弟の絆が謀反者たちを追い詰めるなか、イ・フォンの伏兵が現れてユン・デヒョンらを取り囲む。「今から――狩りを始める。前に進め!」と高らかに宣言したイ・フォンの指示によって、兵たちが動き出す。そこにヤンミョングンとキム・ジェウン(ソン・ジェリム)も、再び肩を並べて戦いに加わっていく。 一方、王妃ユン・ボギョン(キム・ミンソ)は部屋を抜け出していた。イ・フォンとユン・デヒョンの政争はどちらが勝つかによらず、彼女の失脚は変わらない。はじめて出会った頃からただイ・フォンの心だけを欲していたとつぶやきながら、自害の準備を整える。 戦いは、周到に準備を進めていたイ・フォンの兵が圧倒。その場に残っているのはユン・デヒョンのみとなった。立ち尽くすユン・デヒョンの足を、イ・フォンの矢が射貫く。最後までイ・フォンに刃を向けようとするユン・デヒョンに止めを刺したのは、ヤンミョングンだった。 ■最後に残された悲劇 すべてが終わった…かに思えた次の瞬間。イ・フォンに笑みを見せたヤンミョングンの背後で、ユン・デヒョンの兵が傷つきながらも立ち上がる。「兄上」とイ・フォンに声をかけられ、敵の存在に気づきながらもヤンミョングンはその場を動かない。「王様、私の愚かな選択をどうかお許しください。天に太陽は1つ、もう私の存在により混乱を生じさせません」そう心のなかで吐露したヤンミョングンは、最期の力を振り絞った敵兵の投槍に腹を貫かれてしまう。 愛する弟イ・フォンと親友キム・ジェウンに抱き起こされたヤンミョングンは、キム・ジェウンに「お前に抱かれているといいものだな」と笑いかける。明らかな致命傷を受けたヤンミョングンに、イ・フォンは涙を堪えることができない。 ヤンミョングンは力を振り絞って強がる。「王様、なぜ…これしきのことで涙なんて。泣かないでください。私は…大丈夫です」胸元から血に塗れた謀反者の名簿を取り出すと、それをイ・フォンに差し出すヤンミョングン。御医(オウィ)が来ると励ますイ・フォンに、ヤンミョングンは正直に義弟を恨んだこと、王の座を欲したことを語る。しかしそうした暗い炎に胸を焼かれながらも、「でも…捨てられません。大事な友、そして弟が…とても大切でした」と涙ながらに秘めてきた本心をこぼす。血に濡れたヤンミョングンの手を握るイ・フォンに、ヤンミョングンは「王様、強い君主になるのです。そしてヨヌと…民衆を守ってください」と最期の言葉を告げる。 亡き父、残すことになる母、そして幼き日に交わしたホ・ヨヌとの会話がフラッシュバックするなか、ついにヤンミョングンは息を引き取った。イ・フォンは力を失ったヤンミョングンの身体を抱きながら、「私の命令は名簿の入手だけです。死は命じていません。兄上、だめです、目を開けてください。王命です、私に背くのですか」と必死に叫ぶ。悲劇を乗り越えて“すべてを元に戻す”つもりであったイ・フォン。思いもよらない最後の悲劇に、イ・フォンとキム・ジェウンは涙を流すのだった。 ■長い時を超えて、あるべき姿に戻った国と人 ホン・ギュテとともに、イ・フォンに指示された場所にやってきたホ・ヨヌ。そこでホ・ヨヌが出会ったのは、母であるシン氏だった。涙を流しながら、シン氏とホ・ヨヌはその再会を喜び合う。夢なのか現実なのかもわからなくなるほど喜ぶシン氏を前に、ホ・ヨヌは長い時を超えて再び母を呼ぶのだった。 同じころ、シン氏の声を聴いて駆けつけたホ・ヨム。しかし8年前の事実を知ってしまったいま、彼は妹ホ・ヨヌの顔を見ることができなかった。泣き疲れてしまったシン氏を寝かせると、兄ホ・ヨムのもとへ向かうホ・ヨヌ。「そんなに自分を責めて苦しんでいたら、私は生きていることを後悔しますよ。それを――お望みですか?」と、ホ・ヨヌは自分を見てくれない兄の背中に投げかける。 するとゆっくり振り返ったホ・ヨムは妹を見つめ、大罪を犯したと告白するホ・ヨム。「すべて私のせいだ。私だけが悪い」と涙を流すホ・ヨムに、ホ・ヨヌは「褒めてください。良く生きていたと」と優しい声をかける。ホ・ヨムは再び大粒の涙を流しながら妹を抱き締め、「ヨヌ、生きていてくれて、ありがとう」と感謝を告げた。 ホ・ヨヌがミナ王女を許し、キム・ジェウンが改めてヤンミョングンと「これまでも、これからも友」であることを確かめた頃…イ・フォンは、王宮で自死を選んだ王妃ユン・ボギョンの遺体を前にしていた。そのまぶたを閉じさせると、何も言わずにただその場を後にするイ・フォン。道の先にはホ・ヨヌが待っていた。彼女を何も言わずに抱き締めると、イ・フォンは涙を流す。あまりに多くのものを失った王は、1人の人間としてホ・ヨヌに悲しみをぶつけたのだ。 動乱によって乱れた国の問題に向き合うべく、あらたな形で政治を執りおこなうイ・フォン。善悪を見極め、無実の者を放免させ、罪人については相応の罰を負わせた。ミナ王女、ホ・ヨム、チャン・ノギョンなど身内にも等しい態度で量刑を定め、それぞれ適切な罰を与える。 それから、いくばくかのときが過ぎる。そこには新たに道を踏み出した、それぞれの姿があった――。 ■傷ついた太陽と月が、互いを支えて作る未来 チャン・ノギョン、ユン・ボギョンなどがそれぞれの罪をあがない、これまでの因縁や罪業がすべて清算された最終回。犠牲となったものは多かったが、それぞれが解き放たれて未来を歩むようすが描かれた。 しかしヤンミョングンの思いがけない選択や、その非業に塗れた人生の幕切れはまさに衝撃。報われるべき人物であったにも関わらず、あまりにも悲壮な決断には涙を禁じ得なかった。イ・フォンもホ・ヨヌも、失ったものは多く、心に負った傷も深い。しかしそれでも未来へ向かって進む王の政治は、民たちの明るい未来を想像させる。 悲劇の運命に全力で抗ったそれぞれが、相応しい光を手に入れた「太陽を抱く月」。Huluにて全20話が配信中だ。