東京都予算(下)「セーフシティ」無電柱化の推進や統合機動部隊の創設
●木造住宅密集地の不燃化
木造住宅が密集する地域で火災が発生した際、延焼しにくくする「木造住宅密集地域における不燃化」には、711億円を計上します。 都内には、主にJR山手線の外側から環七通り沿いにかけて、東部から南部までぐるっと取り囲むように木造住宅の密集地域が分布しています。この地域の木造住宅は老朽化が進み、地震や火災時には大きな被害が引き起こされることが予想されるため、都は28地域・約6900ヘクタールの木造住宅密集地を整備地域に指定し、木造住宅の撤去や耐火建築物への建て替えなどを進めています。 整備地域の「不燃化」に向けては、延焼を遮断する機能を持つ都市計画道路(特定整備路線)の整備にも649億円を計上。28区間・約25キロメートルで整備を進め、2020年までの全線整備を目指しています。 「建築物の耐震化の促進」(193億円)では、緊急輸送道路沿いにある建物のうち、新耐震基準(1981年施行)が適用されていない古い建物を対象に、耐震診断や改修費用を助成。緊急輸送道路沿いの建物の耐震化率を、2017年6月末の83.6%から2019年度末までに90%へ引き上げる計画です。 「水害に強いまちづくり」では、中小河川や下水道、砂防施設の整備といった豪雨対策(830億円)、江東区や江戸川区など東部低地帯の河川施設や東京港の海岸保全施設の耐震・耐水対策などの津波・高潮対策(667億円)に取り組みます。 前年度より251億円増額された「災害対応力の強化」(357億円)に関しては、今年3月から配布開始した女性視点の防災ブック「東京くらし防災」のPRと多言語版の作成(計1.5億円)を予定。地域や企業で防災活動の核となる女性の防災人材の育成、女性消防団員の定着・加入に向けた支援事業も展開します。
●テロなどの危機対策
「救急活動体制の充実」(18億円)では、救急隊の増強に5億円を配分し、2017年3月末の253隊から259隊に増やす計画です。さらに救急車を呼ぶべきか迷った場合の相談窓口「救急相談センター」をPRして出動件数を抑り、「救急需要予測システム」を構築して効率的な運用をすることで、2020年までに現場到着時間を7分以下に短縮することを目指します(2017年は7分19秒)。 「テロ・サイバーセキュリティ対策」としては、大規模なテロや災害時に被害者らの救出・救助などを行う「統合機動部隊(仮称)の創設」(3億円)も盛り込みました。2020年東京五輪・パラリンピックに向けた取組の一環で、指揮官が現場で指示を出せる「指揮統制車」1台のほか、「救出救助車」1台、爆破テロ対策装備などを整備する計画で、2019年3月発隊の予定です。 (取材・文:具志堅浩二)