平成と令和で“カッコいい”はどう変化した? 人気ドラマから見えてくる人物像の変遷
『GTOリバイバル』(カンテレ・フジテレビ系)が放送され、反町隆史主演の『GTO』が26年ぶりに復活した。問題教師が問題児たちと決して上から目線ではなく対等に向き合う体当たりの“熱血指導”は健在で、その嘘のない向き合いに令和の時代に“GTOらしさ”を目の当たりにした。 【写真】『PICU 小児集中治療室』に出演する吉沢亮 反町演じる鬼塚英吉が特にそうだとは思うが、ヤンチャな香りをどこまでも残す破天荒ぶりが彼の魅力だが、こうわかりやすくエネルギーが外に向いているキャラクターは令和の世に珍しいかもしれない。 反町は『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)でW主演を務めた竹野内豊と共に“平成”を代表するいわゆる“イケメン俳優”と言えるだろうが、当時人気を集めた男性像というのは荒削りで型破りではみ出し者なキャラクターが多かったように思える。 それが令和の今は、例えば『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』(フジテレビ系)の放送が控えている主演の吉沢亮しかり、フレッシュで共感力が高く優しさがあり、自分自身の内側にベクトルを向け内省することも多い駆け出しの小児科医役を好演している。優柔不断なところもあり泣きべそをかく姿がリアルに差し込まれるのが印象的だ。 令和の世には爆発的なカリスマ性を持った1人の異端児や異分子が組織に放り込まれ改革を起こしていくというストーリー展開自体がそう多くはなく、もっと視聴者と近しいところにいる主人公が同じように傷ついたり挫けたりする等身大の姿が描かれることが多いように思える。 あるいは全面的に陽一辺倒のキャラクターというよりも、陰の要素を併せ持つ男性キャラクターが増えている気がする。『東京タワー』(テレビ朝日系)で主演を務める永瀬廉(King & Prince)はその筆頭ではないだろうか。なんだか儚げで、時折見せる切なそうな表情が見過ごせず、優しさと不器用さが同居する放っておけないキャラクターを演じることがここのところ続いている。 ストーリーのど真ん中に居座るような人物ではないのだが、どうしたってこちらが目で追いたくなるような危うさやフラッとどこかに消えてしまいそうな刹那を持ち合わせたキャラクターに心掴まれてしまう。そもそもあまりに個を強く主張するキャラクターだと、本作のような20歳上の女性との許されざる恋の背徳的で耽美な時間やどうしたって抗えない引力を体現できないだろう。 『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)で主演を務める赤楚衛二も平成のような無骨さというよりも令和によく登場する柔和なキャラクターを演じるのが上手い俳優の1人だと言えるだろう。そんな赤楚が本作では復讐心や野心に駆られ、大病院と敵対する新聞記者役を演じるようで、彼の新たな一面が引き出されそうで楽しみだ。 いずれにしても、なんだかどこかいつだって尖っているという外側に向けたエネルギー発散型の溌剌としたキャラクターよりも、自身の内側に向かって静観しじっと抱え込んでいるものがある男性像が増えた昨今。他者との摩擦の中で発揮されるワイルドや猪突猛進という形容詞よりも、ソフトだが骨太で揺らぎを繊細に見せてくれるキャラクターを演じられる俳優がより求められているのかもしれない。 周囲に大胆にファイティングポーズをとるというよりは自分自身と葛藤し乗り越えていくような実直さが滲むキャラクターをより魅力的に見せてくれるのが令和の世に支持されやすい嘘のない“カッコいい”なのかもしれない。
佳香(かこ)