年金の繰上げ受給中に「がん」のステージ4と診断されました。遺族年金は減りますか?
年金を繰り上げて受給している場合、その繰上げ期間に応じて受けとれる年金額が減少します。もし、その後、亡くなった場合、遺族年金への影響はどうなるのでしょうか。特に 「がん」 は日本人に多いといわれる病気です。繰上げ受給中にがんが発見され、その後に亡くなった際、遺族が受けとる年金額に影響があるか解説していきます。
繰上げ受給の仕組み
まずは年金の繰上げ受給の仕組みについて確認していきます。 年金の繰上げ受給とは、原則65歳から受けとる老齢年金について、希望に応じて60歳から65歳になるまでの間に受けとり時期を変更できるという仕組みです。 しかし、繰上げ期間に応じて受給する老齢年金が減額されるというデメリットが生じます。減額は1ヶ月、繰り上げるごとに0.4%の割り合いでなされます。仮に60歳まで繰り上げた場合は、受けとる年金額が24%減額され、本来の76%の額となります。 もし、65歳からの老齢年金を、毎月10万円受けとれる方が、60歳まで繰り上げた場合は2万4000円の減額がされ、7万6000円になります。
遺族年金への影響は基本的には気にしなくてもよい
繰上げ受給によって老齢年金額が減ってしまっていると、遺族年金も減ってしまうのではないのか、気になるところです。この点に関していえば、遺族年金が減額されることはありません。それは、繰上げ受給後の老齢年金の受給額を基準にするわけではないからです。 遺族年金のうち、亡くなった方が国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金が、また、厚生年金に加入していた方の場合は、遺族厚生年金 (一定の条件に該当する場合には遺族基礎年金に上乗せ) が、亡くなった方に生計を維持されていたそれぞれの遺族に支給されます。 遺族基礎年金の支給額は79万5000円 (2023年度基準) を基準にし、子の有無や数に応じて増額されます。遺族厚生年金においては、おおむね亡くなった方の報酬比例部分の4分の3の額が支給されます。そのため、繰上げ受給による遺族年金への影響を気にする必要はありません。 なお、直接的に繰上げ受給とは関係ありませんが、併給(へいきゅう)調整によって遺族厚生年金が一部、減額となる場合があります。それは、遺族が受けとる遺族厚生年金と65歳以上で受けとる老齢厚生年金を併給するときです。この場合、遺族自身の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金は老齢厚生年金の支給額より高い場合に、その差額が支給されます。 例えば、遺族厚生年金が10万円、遺族自身の厚生年金が6万円支給される場合、差額の4万円が支給されるという具合です。