【大学トレンド】増える公立大学、9つの魅力 東大、早慶など「難関大」志向に変化?
進学にかかる費用を抑えるために、自宅から通える大学を選ぶ学生は少なくありません。学費が安い公立大学は年々、その数を増やし、地元での存在感を高めているようです。教育ジャーナリストの小林哲夫さんが、公立大学の現状を解説します。 【写真】短大を選ぶ「いまどき」のメリットとは?
全国各地の受験生の間で地元志向が広がっている。地方の進学校教員がこう話す。 「2000年代ぐらいまで東大や京大、早慶上智、関関同立など難関大学を目指していた成績優秀な生徒層が昨今、地元の大学に進むようになった」 地元志向を証明する確たるデータはない。だが、関東、関西の都市部の大学では、入学者のうち地方出身者が減っており、その裏返しとして地元の大学を第1志望とする受験生が多くなったようだ。このように進学校の教員は見ている。 地元志向で存在感を示しているのが、公立大学である。学費が安く、自宅から通えることで人気が高い。そして、公立大学そのものも数が増えて、受け入れ定員枠が広がった。 01年度からの公立大学の数、学生数の推移を見ると、次の通り なぜ、公立大学は増えたのだろうか。ざっとこんな背景が考えられる(カッコ内は設置地域、開校年)。 地元の公立短期大学が「短大離れ」を見越して4年制大学化した。福山市立女子短期大→福山市立大(広島、11年)、新見公立短期大→新見公立大(岡山、10年)など。 自治体の少子化対策、地域活性化政策。若い世代の地元からの流出を防ぎ、他地域から若い世代を集めて地域の活性化を図る。芸術文化観光専門職大(兵庫、21年)、叡啓大(広島、21年) 定員割れとなり、経営難の私立大学を地方公共団体が救済する。徳山大→周南公立大(山口、22年)、旭川大→旭川市立大(北海道、23年)
国家試験合格率100%の大学も
受験生目線から公立大学を見てみよう。 全国各地に公立大学がつくられるのは、地元の高校生にとってはありがたい話だ。自宅近くに、自分の将来につながる分野を学べる大学・学部がなく、関東や関西の大学に進まなければならない。そんな状況が解消しつつあるからだ。 例えば、看護師や保健師、リハビリテーションを支援する理学療法士や作業療法士になりたい場合、以前ならば、地域によっては地元を離れなければならなかった。だが、いまでは、自宅から通える大学にこうした専門職養成機関が増えた。 その柱となるのは公立大学である。就職率や専門職になるための国家試験合格率がかなり高いことが、地元の受験生に支持されている。 就職率が高い学部を持つ公立大学がある。 ◆観光系学部:長野大環境ツーリズム学部97.9%(1位) ◆理・工・理工学部:名古屋市立大総合生命理学部100%(1位) ◆国際系学部:公立小松大国際文化交流学部98.6%(2位) ◆商・経営・経済学部:横浜市立大国際商学部96.9%(4位) ◆文学部:群馬県立女子大文学部92.3%(7位) ◆保健・福祉・健康系学部:愛知県立大教育福祉学部98.9%(10位) (23年度、大学通信調査) 福祉・医療系などの国家試験合格率100%は次のとおり。 ◆社会福祉士:名古屋市立大 ◆精神保健福祉士:神奈川県立保健福祉大、福井県立大、岡山県立大 ◆理学療法士:青森県立保健大、千葉県立保健医療大、神奈川県立保健福祉大、大阪公立大、県立広島大 ◆歯科衛生士:埼玉県立大、九州歯科大 ◆臨床工学技士:公立小松大 ◆管理栄養士:長野県立大、熊本県立大、福岡女子大 ◆臨床検査技師:埼玉県立大 (23年度、厚生労働省資料から)