ピレリカレンダー「The Cal」の2024年度版が発表
タイヤメーカー、ピレリによる「The Cal」がついに50回目の刊行を迎えた。ロンドンでの発表会の様子をレポートする。 【写真を見る】ピレリカレンダーの一部をチェック!
アフリカの才能
美術本愛好家のあいだで人気の高いピレリカレンダー「The Cal」。50回目の刊行にあたる2024年版が、2023年11月末にロンドンで発表された。 24年版の「The Cal」を担当したのは、ガーナ出身のビジュアルアーティスト、プリンス・ジャスイ(Prince Gyasi)。これまで「The Cal」を手がけた39人目のアーティストとなる。 iPhoneを使い、アフリカ系のひとたちのポートレートを撮影。それにビビッドな背景色を組み合わせた作品で一躍名を馳せた。22年の京都国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」でも大いに注目された。作品の特徴として「黒人の肌の気高さと優美さを表現して」いることを、KYOTOGRAPHIEでは称えている。 そこで当然というか、The Calでも彼は出演者に、すべてアフリカ系の人物を選んだ。 テーマは「タイムレス」。プリンス・ジャスィは、「子どものときから今にいたるまで、時間を超越して自分のアイドルだったひとたちをキャストしました」と、ロンドンでのインタビューで語ってくれた。 出演者は以下のとおりとなる。人名の後ろのカッコ内には本来の職業と、時間にからめたカレンダーでの役柄を記載した。 Amoako Boafo(ガーナの画家兼ビジュアルアーティスト/The Chosen One) Angela Bassett(米女優/Altruistic=利他主義者) Margot Lee Shetterly & Amanda Gorman(ともに米の文学者/The Blueprint) Young Prince(プリンス・ジャシの子ども時代/Studious=勉強熱心な子) His Majesty Otumfuo Osei Tutu II(アシャンテ王国王/Royalty) Idris Elba(ご存知英国の俳優/Man Of Honour) Jeymes Samuel(別名The Bullittsで知られる英国のシンガー・ソングライター/Visionary) Marcel Desailly(ガーナ出身のサッカー選手/Focus) Naomi Campbell(モデル/Time Stopper) Prince Gyasi(Details) Tiwa Savage(ナイジェリアのシンガー/Resilience=回復力) Teyana Taylor(米のシンガー・ソングライター兼女優/Future Forward) 役側の英単語はひねりが効かせてある。けれど、よーく考えると、1995年生まれのプリンス・ジャスィの成長の物語を、時間軸でとらえたように思えるから面白い。 同時に、彼の社会奉仕活動として、ガーナの首都アクラにおける「Boxed Kids」(抜け出せない場所や状況に閉じ込められた子どもたちの支援活動)が知られている。 子どもを含む若いひとたちが、教育を受け、才能を発揮する場所を見つけ、「継続して努力すればなんでもできることを伝えたい」(プリンス・ジャスィ)のだと話している。 ■50回記念 ロンドンはテムズ川沿い、グリニッチそばの「マガジン・ロンドン」が、The Cal 2024の発表会の舞台だった。 「The Calのはじまりは、1964年。最初に起用した写真家は、ロバート・フリーマン。ザ・ビートルズの写真{「With The Beatles」「A Hard Day's Night」「Help! 」「Rubber Soul)のジャケット等)を撮影したひとでした」 会場に設営された舞台に登壇した、ピレリ社のマルコ・トロンケッティ・プロベラ取締役副会長は、The Calの歴史を振り返った。 「50回目の出版を迎える24年版で、プリンス・ジャシはアフリカ系のひとたちをキャスティングしてくれました。ピレリタイヤにとっても、アフリカは伸びゆくマーケットだし、文化的にも産業的にも、欧州とのつながりがこれからも深くなっていくと思っています」 プリンス・ジャスィとピレリThe Calの共同声明のような今回の作品。カレンダーの枠を超えて、ある種の”本”のような濃い内容だ。一般発売されないのが残念。ここで一部を楽しんでください。
文・小川フミオ 編集・岩田桂視(GQ)