もはや日本は、中国に勝てない…いつの間にか中国の「半導体」がすさまじく進化していた!
いくらでも血税を使いたい放題のマジックワード「経済安全保障」。その言葉を巧みに駆使して、政治家と経産省が「アメリカの猿真似」を始めた。そのツケを最後に払うのは、結局われわれ国民だ。 【画像】中国で、まさか「長江」が干上がった…!
中国「驚異の5Gスマホ」
本連載では、多額の補助金で沸く「半導体バブル」の実態と経済産業省の暴走ぶりを見てきた。しかし何兆円もの血税を投入しても日本の半導体産業は、米国や台湾はおろか、中国にすら太刀打ちできないのが現実だ。 使われている半導体ひとつとっても、劣勢は明らかだ。スペインのバルセロナで2月下旬に開かれた世界最大の通信機器見本市「モバイル・ワールド・コングレス」。現地を訪れた筆者は中国の通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)の、展示棟を1棟丸ごと借り切ったド派手なブースに驚かされた。 そのファーウェイ棟で黒山の人だかりができていたのが、このとき初公開された5G相当のスマートフォン「Pura70」だ。 「中国に5Gスマホは作れない」 日本や米欧では長くそう言われてきた。高速大容量の5G通信に対応するには、最先端の半導体が必要だ。その半導体を作るには回路線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の微細な加工を施す「極端紫外線(EUV)露光装置」が欠かせない。この装置が作れるのは、世界で唯一オランダの半導体装置メーカー・ASMLだけだ。 最先端技術で中国の猛追を受ける米国はかねてから同盟国に対し、中国に技術を流出させないよう要請してきた。EUV露光装置は、1996年に日米欧露など33ヵ国がオランダで合意した輸出管理協定「ワッセナー・アレンジメント」に抵触するため中国への輸出はできないが、オランダ政府は昨年、EUVより1世代前の深紫外線(DUV)露光装置まで規制対象にしている。 米中経済摩擦が激化する中、日米欧は最先端半導体にももちろん輸出規制をかけている。供給を止められた中国は内製化を急ぐが、最先端装置がなければ最先端半導体は作れない。ファーウェイを筆頭に、日米欧の「兵糧攻め」にあった中国のハイテク大手は一時、軒並み業績を悪化させた。 ところが、である。ファーウェイが2月にバルセロナでお披露目した「Pura70」は5Gに対応していた。調査の結果、回路線幅7ナノメートルの最先端半導体チップを搭載していることが分かった。 「Kirin9010」という7ナノチップはファーウェイが開発し、世界5位のファウンドリ(半導体生産会社)、中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造した。EUV露光装置を使わず、代わりにDUV露光装置を駆使することで7ナノを実現したと見られている。 7ナノ半導体の量産に成功したのは世界最大のファウンドリである台湾のTSMC、同2位の韓国・サムスン電子、米インテルに次ぐ4社目で、SMICは生産金額でも3社を猛追している。 ファーウェイが4月に発表した2024年1~3月期決算の純利益は、前年同期比6.6倍の196億4918万元(約4280億円)。SMICの同期の売上高も20%増えている。同社の地域別の売上高を見ると、3年前に28%だった米国向けが15%に減り、56%だった中国向けが82%に増えた。米欧日からハイテク製品、生産装置、部品の供給を止められた中国はこの数年でそれらの内製化に成功し、包囲網を突破したことを示している。