75周年を迎えた2024年のMotoGP。熾烈なチャンピオン争いの歴史は国と国による興亡の物語だった
1960年代の半ばまで続いた英国人ライダーの時代
次にライダーへ目を移すと、マシン同様、GP初期は英国勢の活躍が続く。レスリー・グラハムが母国のAJSで初代チャンピオンに就いたのに始まり、2輪レース初のスーパースターと称されたジェフ・デューク、後にフェラーリでF1も制覇するジョン・サーティースが共に3年連続を含む4回と、1949年から1960年までの12年間で9回イギリス人が500cc王者に。 コンストラクターズ争いは数年でイタリア勢に立場を逆転されたが、デュークはジレラ、サーティースはMVアグスタと、ライバル国のメーカーに移籍し、英国人ライダーの時代をつないだ。
1970年代にかけては“マイク・ザ・バイク”ことマイク・ヘイルウッドが4連覇、フィル・リードとバリー・シーンがそれぞれ2連覇と最大排気量クラスで存在感を示した。
史上最高のライダーたちが打ち立てた2度の黄金期
その頃に台頭し、MVアグスタで隆盛を極めたのが、1966年から1972年まで500ccを7年連続で制したジャコモ・アゴスチーニ。
この時代は同一シーズンに複数クラスにエントリーするライダーも少なくなかったが、アゴスチーニのそのひとりで、1968年から1974年に350ccも7連覇。ヤマハに500ccで初のメーカータイトルをもたらしたのも特筆に値する。計15回の世界王座、通算122勝を手にし、イタリア黄金期を打ち立てた。 1996年デビュー。通算115勝を挙げ、9回世界チャンピオンになったバレンティーノ・ロッシと並び、“史上最高のライダー”との呼び声も高い。
ダートトラックで腕を磨いたアメリカンとオージー
1978年にケニー・ロバーツが登場するとアメリカの時代が到来。
ダートトラックで鍛えたアメリカンたちは2ストローク500ccのモンスターを豪快にスライドさせ、GPを席巻。1983年の“キング・ケニー”と“ファスト・フレディ”ことフレディ・スペンサーによる壮絶なタイトルを巡る戦いは伝説となっている。 1980年代後半から1990年代前半にかけてはエディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ケビン・シュワンツらが覇を競うが、ロバーツが初戴冠した1978年からシュワンツがチャンピオンになった1993年までの16年間の内、アメリカ人のタイトル奪取は13年に及んだ。そんな状況に割って入ったのが、こちらも未舗装路で腕を磨いたワイン・ガードナーだ。 モリワキエンジニアリングの森脇護が見出したガードナーは、オーストラリア人初の500cc王者に輝き、その後、時代を築くミック・ドゥーハン、ケーシー・ストーナーの先駆けとなった。