あれっ、ゼレンスキー大統領の任期が5月20日に切れていた!
2019年5月20日、コメディアンだったウォロディミル・ゼレンスキーは大統領に就任した(下の写真)。あれから5年。2024年5月20日、ゼレンスキー大統領の任期が切れた。しかし戒厳令の施行を理由に、彼は大統領選を回避し、大統領の座に居座ろうとしている。そんな彼に大統領としての正統性はあるのだろうか。 【写真】「プーチン」が笑顔で女性と踊る姿…他「幼少期の貴重ショット」など大公開! (出所)https://www.president.gov.ua/news/inavguracijna-promova-prezidenta-ukrayini-volodimira-zelensk-55489
ウクライナ法はどう規定しているのか
現行ウクライナ憲法の第83条では、「戒厳令または非常事態が発令されている間にウクライナ議会の権限が失効した場合、その権限は、戒厳令または非常事態の解除後に選出された議会が第1会期の初会合を招集する日まで延長される」と規定されている。だが、大統領の権限については、同種の規定が憲法には存在しない。 憲法第103条では、大統領の任期は5年とされているが、第108条では、「ウクライナ大統領は、新たに選出されたウクライナ大統領が就任するまでその権限を行使する」と書かれているだけだ。ただ、2015年制定の法律「戒厳令の法体系について」の「第19条 戒厳令下における合法性の保証」において、 「戒厳令下では、以下のことは禁止されている」として、(1)ウクライナ憲法の改正、(2)クリミア自治共和国憲法の改正、(3)ウクライナ大統領選挙、ウクライナ国民議会選挙、クリミア自治共和国国民議会選挙、地方自治選挙を実施すること、(4)ウクライナ全土および地方の住民投票を実施すること、(5)ストライキ、大集会、行動を行うこと――という項目が列挙されている。
戒厳令がつづけば大統領に居座れる
この法律を改正すれば、戒厳令下でも大統領選を実施することは可能ということになる。しかし、現実に戦争が継続している以上、国民の安全を確保しながら、大統領選に臨むことは不可能に近い。 そうなると、戒厳令がつづくかぎり、すなわち戦争を継続するかぎり、いまのゼレンスキー大統領がその地位に居座ることができることになる。これが意味するのは、戦争継続による権力保持へのインセンティブであり、大統領の権限に固執するゼレンスキーが、いつまでも戦争を継続しようとするのではないかという懸念を招きかねない。