「心不全」リスク、電子タバコで19%上昇「禁煙の道具として推奨できない」
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: これまでにも、電子タバコを吸う習慣に伴う心臓病の発症リスクの増加や、肺病変に関連するいくつかの健康的な弊害を引き起こす可能性があると指摘されていました。 ACCが発表した新たな研究結果によると、ニコチンを含む電子タバコ(※)を人生のいずれかの時点で使用した人は、未使用者と比べて心不全を発症する可能性が19%程度高かったということであり、電子タバコの長期使用は体内の血管の機能を著しく損なうリスクがあることを提言しています。 電子タバコの歴史自体は、紙巻きタバコと比較してまだ浅く、心臓など臓器への長期的な影響は十分に研究されていませんが、今回の研究を通じて、電子タバコを長期的に使用すれば、心臓病を発症するリスクを増加させる可能性があると判明しました。 今後は、電子タバコを使用している人と使用しない人を対象にして、心臓圧や心拍数の変化、血管の収縮運動や運動の耐用性などの観点から比較検討する研究がさらに深層的に進むことが期待されます。 ※日本では「ニコチンを含む電子タバコ」の販売は法律で禁止されています。タバコ葉やタバコ葉の加工品を電気で加熱し、それによって発生した蒸気を吸入する製品は「加熱式タバコ」です。
まとめ
電子タバコを使用している人は、使用したことがない人と比べて心不全を発症する可能性が有意に高いことが、ACCの年次学術集会で明らかにされました。日本でも心不全の患者数は増加しているため、今回の研究は注目を集めそうです。
【この記事の監修医師】 甲斐沼 孟 先生(上場企業産業医) 大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
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