【ライブレポート】アカシック完全復活宣言公演、下北沢でシャウトしまくり「今日はみんな18歳です!」
アカシックが11月14日に東京・下北沢シャングリラでワンマンライブ「恐るべき計画」を開催した。 【写真】30代が板に付いてきた奥脇達也 11月に東阪で行われた「恐るべき計画」は、アカシックの“完全復活宣言公演”。2019年10月の解散以降、不定期にライブ開催を重ねていたアカシックだが、本公演をもって“完全復活”を果たした。 ライブは未発表曲「夕方」でスタート。山田康二郎(Dr)が刻むタイトなビートの上で、理姫(Vo)のざらついた歌声と石地翔汰(Key)のきらびやかなフレーズがこだまする。理姫は「あたしはね、なんでもすぐに飽きちゃうんだよ。だけどね、1つだけやめられないことがあります。それがバンドです! どうしていつまでもいつまでもライブに来てくれるんだよ。みんなおかしいんじゃない? あたしはね、幸せすぎて気が狂いそうだよ!」とシャウト。「8ミリフィルム」ではステージの照明が白く、こうこうと輝き、抑制された1曲目からのカタルシスが観客を魅了する。メロディックに動き回るバンビ(B)のベースが圧倒的なグルーヴを生み出し、理姫の切実な歌声がフロアを飛び交った。 序盤から手加減なしに会場をヒートアップさせた「CGギャル」「いちかばちかちゃん」を経て、奥脇達也(G)がステージ最前線でギターをかき鳴らし始まったのは「秘密のデート」。フロアに漂うご機嫌なムードは「憂い切る身」で一変する。内なる熱を爆発させていくように、一音一音を重たく刻む5人。奥脇の攻撃的なギターの音色がこだまし、理姫は叫びにも似た声でハイトーンを炸裂させた。 「あたしね、ひさしぶりに下北沢に来たんだけどね。横が楽器屋だったの。その横はドンキだったの。前は違ったよね?」と観客に問いかける理姫。「たくさんの荷物を持って横浜から来たけど、楽器屋さんがあって、ドンキがあったらね、すべてを忘れてもライブができるなと思ったの。お化粧道具も、洋服も、靴も、ドンキに行けば全部売ってんじゃん」と会場の笑いを誘う。さらに奥脇が実際にステージ衣装を忘れて急遽購入したことが暴露された。「ロリータ」では手数の多い山田のドラムと、うねるようなバンビのベースがリスナーの体を揺らし、そのまま最新曲「ダーリン(令和)」になだれ込むと、理姫が髪を振り乱しながらパフォーマンス。突き抜けるような明るさと絶妙な気怠さを併せ持つ彼女の魅力が、存分に発揮された。 ステージ後方から真っ赤なライトが差し、赤く塗装された下北沢シャングリラの壁も相まって、真紅に染め上げられる場内。理姫が「もっとラブラブになろうよ。おいでよ。やろうよ」と妖しげに呟くと、2度目の「CGギャル」が始まる。奥脇がギターでイントロのベースリフをなぞり、普段とは異なるギターソロを披露するなど、この日だけのプレミア感でファンを高揚させた。 理姫が目元でピースサインを決めてスタートしたのは「プリチー」。石地がファンシーな音色をこだまさせ、彼女は早口でリリックをまくし立てていく。観客は踊り、跳び、クラップし、場内はお祭り騒ぎに。断末魔の叫びのごとくすさまじいシャウトが響いたのち、奥脇が「先日、歳を召しまして」と切り出す。「30代もなかなか板に付いてきまして。こうなってくると肩凝りが取れないとか、仕事がうまくいかないとか、軽く人生が煮詰まってくる感じしませんか。そんなあなたにおすすめなのが『島耕作』です。島耕作は34歳から現在まで、リアルタイムで歳をとっているので、自分の年齢に照らし合わせながら読むととても面白いです」という突拍子のないマンガ紹介に続き「まあ歳は取りますが、意外と精神年齢は変わらないじゃないですか。僕はずっと18歳くらいのまま。なので、今日はみんな18歳です! 18歳はこんなもんじゃないだろー!」と高らかに声を上げ、フロアを沸かせた。 「次、やばい曲やりまーす!」という奥脇の言葉を合図に、「飾り(令和)」がスタート。シンコペーションを多用した疾走感あふれるビートに乗せて、理姫が喉を使い果たしそうな勢いで心の叫びを吐露していく。場内に大歓声が巻き起こる中、「LSD」が畳みかけられ、パンキッシュなバンドアンサンブルは休まることを知らない。間奏部分では理姫が手鏡で口紅を直すひと幕も見られ、フロアから女性ファンの「かわいいよ!」という声が上がった。 「RED」が観客をノイズの渦に巻き込んだのち、「アルカイックセンチメント」のビートを刻み始める山田。奥脇と石地がユニゾンでキャッチーなリフを響かせ、場内は晴れやかなムードで満たされる。一切疲れを感じさせない理姫は序盤と変わらぬフルパワーで歌声を届け、「お色直ししてくる。すぐ戻って来るから、待ってて!」と言い残し、ステージをあとにした。 アンコールに応え、ツインテール姿で再登場した理姫。「アカシックでーす!」という2度目の挨拶とともに「エリザベスロマン」が演奏される。彼女はファンに向けて「毎日さ、手に入れるものよりも、あきらめるもののほうが多いじゃん? だけどさ、『来世に期待!』とかやめてさ、今手に入れられそうなものは、ちょっとぐらい泣いても、がんばらなきゃいけなくても、手に入れようよって思うんだ。みんながちょっとだけそう思って、ちょっとおいしいお菓子とか買うようになったら、日本の経済も潤って、いいんじゃないかなって思います」と優しく語りかけたのち、「来年、フルアルバム出すんだ!」と発表。さらに「解散してお騒がせしても、こうやってライブに来てくださる皆さん、本当にありがとうございます。私は先に言ってから帳尻を合わすタイプなので言うんですけど……ツアーもやります! 福岡とか、札幌とか行きたい!」と事務所を通しているのか不確かな告知も追加された。 明るいニュースに花を添えるように披露されたのは「マイラグジュアリーナイト」。ピアノの音色がころころと遊び回るように響く中、理姫の無邪気な歌声がただひたすらまっすぐに飛んでいく。「失爽宣言」がスタートすると、理姫は満員のフロアに下り、ファンの間を掻い潜りながら熱唱。すさまじい熱気が立ち込める中、ラストナンバー「サイノロジック」が投下され、パンキッシュな夜はあっという間に終わりを迎えた。 ■ セットリスト □ アカシック 完全復活宣言公演「恐るべき計画」2024年11月14日 下北沢シャングリラ 01. 夕方 02. 8ミリフィルム 03. CGギャル 04. いちかばちかちゃん 05. 秘密のデート 06. 憂い切る身 07. ロリータ 08. ダーリン(令和) 09. CGギャル 10. プリチー 11. 飾り(令和) 12. LSD 13. RED 14. アルカイックセンチメント <アンコール> 15. エリザベスロマン 16. マイラグジュアリーナイト 17. 失爽宣言 18. サイノロジック