【高校野球】大院大高・辻盛英一監督は社長と監督の“二刀流” 春季大阪府大会初優勝の勢いで夏の甲子園初出場を目指す
第106回全国高校野球選手権大阪大会(7月6日開幕)の組み合わせ抽選会が17日、大阪市内で行われ、春季府大会で初優勝した大院大高は、14日の2回戦で港―同志社香里の勝者と対戦することが決まった。今春はプロ注目遊撃手・今坂幸暉主将(3年)を中心に大阪桐蔭と履正社を撃破。ナインを率いる就任2年目の辻盛英一監督(48)は「トップ営業マン」の顔を持つ。勝負手の「投手・今坂」で、大阪では2015年の大阪偕星学園以来となる夏の甲子園初出場を目指す。(取材・構成=瀬川 楓花) ビジネス街を一望できるガラス張りのオフィス。スーツ姿の大院大高・辻盛監督は、32人の社員を束ねる現役社長でもある。「営業マンとして成功するための心の持ちようと、スポーツで成功するための心の持ちようは、ほぼ100%同じです」。穏やかな表情で力説した。 練習のない火曜日を除き、平日は午後3時に仕事を終え、同8時まで指導する。その後、スーツに着替えて再び会社に戻ると、営業マン向けのオンラインサロン(社交場)や研修を開催。辻盛監督は、過去に大手保険会社・アリコジャパン(現メットライフ生命保険)で13年連続売上トップを記録したカリスマ営業マンだ。サロンは満席。予約を取れない人が、グラウンドまで訪れたことがあった。 その傍ら、監督就任2年目で春の大阪を極めたが「正直、あまり教えられない。『内野を教えろ』と言われても無理ですね」と笑う。作戦と方針は担うが、練習は自社の従業員3人を含む最大8人のコーチと分野ごとに指導。また、22年に完成したグラウンドや室内練習場、充実したトレーニングジムに加え、就任後にラプソードやインボディ(体成分分析装置)、BLAST(打撃数値計測機器)などを次々と導入した。掲げる「日本一」へ、環境整備も怠らない。 “ノーサイン野球”もその一つだ。「(サインは)選択肢を与えることになるので、それ以外を考えられなくなる。そうなると、監督の限界までしか強くならない」。練習や試合中に「こうしたら面白いのでは?」と選手が自ら作戦を生み出し、会話やアイコンタクトを通して実践する。作戦の数はもう、数えられない。自主性を重視し、高校生が秘める無限の可能性を引き出す。「不平不満、誹謗(ひぼう)中傷を言わない」ことも徹底している。 春季近畿大会は1回戦で須磨翔風(兵庫)に1―3で敗れた。「もう一発、チーム力をあげる」と指揮官。その手腕で今夏、大阪の勢力図に新風を吹き込む。 ◆辻盛 英一(つじもり・えいいち)1976年5月7日、奈良市生まれ。48歳。奈良高、近畿学生野球リーグの大阪市大(現大阪公立大)では外野手。卒業後は三井住友銀行などを経て、18年から生命保険代理店「株式会社ライフメトリクス」を経営する。10~22年は大阪市大の監督を務め、17年秋に24年ぶりのリーグ優勝に導いた。19年秋もV。23年3月に大院大高の監督に就任した。著書に「営業は自分の『特別』を売りなさい」などがある。
報知新聞社