フリーアナウンサー・神田愛花『″人妻の性″に向かう私のジャーナリズム魂』
最近、TBSラジオのポッドキャスト番組『大久保佳代子とらぶぶらLOVE』にハマっている。料理をしながら、洗濯物を畳みながら、耳を自由に使っていい時間を見つけては、最新のエピソードから順に過去の放送を聴いている。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~36回)はこちら パーソナリティは、お笑いコンビ・オアシズの大久保佳代子さん。よくある若い女の子の生温(なまぬる)い恋愛相談番組ではなく、50代くらいまでの大人の女性の性の悩みを面白おかしく噛み砕き、大久保さん流の解決策を提案するという番組だ。この番組のおかげで、私は最近、既婚女性たちのリアルな性事情に興味津々なのだ。とにかくリスナーから届く悩みが凄(すさ)まじい。「新婚で幸せですが、昔の浮気相手とまた体の関係を持ちたいんです。何年後から連絡してもいいですか?」とか、「既婚者ですが、元カレと12年間、体の関係が続いています。このままでいいでしょうか?」、さらに「息子のサッカー部の先輩である高校3年生に恋心を抱いてしまいました。どうしたらいいでしょうか?」など。官能小説みたいな出来事が本当に起きているなんて!! 結婚とは、一生お相手の男性だけを愛し続け、決して他の男性に好意を持たない契約だと思ってきた。すれ違った男性を「カッコいい!」と感じることさえ、妻としての品格と自覚に欠ける行為だと信じ込んできた。今現在、夫以外の男性に興味があるわけでもないし、夫以外の男性と恋愛したいわけでもない。だが、世の既婚女性たちがこれほど自分の気持ちにまっすぐに生きているのならば、私だって、結婚後は抑えてきた性に対するジャーナリズム魂を多少復活させてもいいのでは!? と思い始めたのだ。 ◆気になる女性用風俗の世界 ある日の夕方、自宅で独りきりの時。お気に入りのコーヒーをいつもよりたっぷりカップに注ぎ、ソファに座った。iPhoneを手に取りGoogleアプリをタップ。背中にある窓ガラス越しにお向かいのマンションの住人がこちらを覗いていないかを確認し、ドキドキしながら……″東京秘密基地″と入力した。 『東京秘密基地』とは、少し前からメディアでも話題になっている出張型女性用風俗のお店。ホームページに掲載されている男性の中から好みのタイプの人を選び、こちらが指定する場所に呼ぶ。そして性的なサービスを受けるという、デリバリーヘルスだ。 働き方も子育ても男女平等が叫ばれているこのご時勢、性風俗に関してはその差を縮める動きが鈍い。以前からそこに対して疑問を抱き、友達と議論を重ねてきた。そして「″女性は慎ましくあるべき″という日本的な考えが根本から抜けないから」「男性の生殖器は一日に何人も相手にできる構造になっていないから」という2点で結論づけてきた(ちなみに東京秘密基地では本番行為は禁止だ)。 ではなぜ、東京秘密基地はこんなに流行っているのか。その名前を耳にするようになってからずっと、理由を調べるべく検索したかったのだが、人妻である私がそのお店の名前を入力することに抵抗があり、できずにいた。それがようやく行動に移せたのだ。もう一度書いておくが、これが私のジャーナリズム魂だ。 親指をものすごい速さで動かし、男性の写真をすべてチェック。とりあえず夫らしき男性がいないことに安堵した。そして結局怖くなり、サービス内容を紹介している動画を再生することは控えてしまった。だが流行りの女性用風俗に触れたことで″最先端人妻″にレベルアップした気持ちになり、サイトを閉じた。 数日後、芸能界で活躍する既婚女性と食事をする機会があり、私は意気揚々と「ねぇねぇ、東京秘密基地って知ってる?」と話を切り出した。ジャーナリズム魂を持つ最先端人妻として、知識の幅をひけらかそうと思ったのだ。だがなんと、「知ってる! 友達がこの前使ったって言ってた!」と返ってきた。 「え!? 友達に利用した人がいるの!?」と大きな声が出た。どんなサービスがあったのか、事細かに聞いたそうだ。私の周りにはまだ利用者はいないし、私もまだホームページをチェックしただけ。その友達の話によると、「そりゃ流行るわ! って思った」とのこと。なにがジャーナリズム魂だ、情けない。彼女のほうがより詳しい情報を持っているではないか。私の友達よ、早く利用してくれ!! かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年1月26日号より 文・イラスト:神田愛花
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