<季節のない街・最終回>池松壮亮“半助”たちが大暴れ “街”に終わりの日が訪れ、暗黙のルールも誕生
宮藤官九郎が企画・監督・脚本を、池松壮亮が主演を務めるドラマ25「季節のない街」(毎週金曜夜0:42-1:13、テレ東系※最終回の6月7日は5分拡大/ディズニープラスにて配信中)の第10話「とうちゃん」が、6月7日に放送された。最終回である第10話では、仮設住宅の取り壊しの日が迫り、最後に半助(池松)も感情があふれ出し住民たちが大暴れした。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】立ち退きを拒否する塚地武雅“良太郎”たち家族 ■宮藤官九郎が20代の頃から切望していた企画を映像化 同作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた“ナニ”の災害をへて建てられた仮設住宅のある“街”へ置き換え、現代の物語として再構築。希望を失い、この“街”にやってきた主人公が“街”の住人たちの姿に希望を見つけ、人生を再生していく青春群像エンターテインメントとなっている。 宮藤が20代のころから切望していた企画で、テレ東とディズニーの共同製作で実現した作品。原作小説は、1970年に黒澤明監督が「どですかでん」のタイトルで映画化したことでも知られており、映画は1972年の第44回アカデミー賞外国語映画賞(現・国際長編映画賞)にノミネートされた。 ■群像劇を彩るキャストが多数集結 怪しげな男の指示で、街に住む人々の暮らしぶりを報告する仕事を請け負い、猫のトラと一緒に街に潜入する主人公・半助こと田中新助を演じるのは池松。街の青年部を率いる、母親の愛情に飢えた承認欲求高めな“親思い”の次男・タツヤ役を仲野太賀が務める。 また、街の近所に住む酒店の息子で、好きな女の子目当てで街に出入りしているオカベを演じるのは渡辺大知。さらに、オカベが恋する、街で一番内気なかつ子役は三浦透子、タツヤの母・しのぶ役は坂井真紀。「どですかでん」と叫びながら“見えない電車”を毎日一人で運転する六ちゃん役は濱田岳、六ちゃんの母・くに子役は片桐はいり、六ちゃんのよき理解者であり街を見守るたんばさん役はベンガルが務める。 ほか、増子直純(怒髪天)、高橋メアリージュン、荒川良々、MEGUMI、皆川猿時、又吉直樹、前田敦子、塚地武雅、藤井隆、鶴見辰吾、岩松了らキャストが集結し、“全員ワケあり&いわくつき”の個性豊かな住人として登場。 ■たんばさんが立ち退きを承諾し、立ち退き交渉も加速 たんばさんが立ち退きを承諾。それによって、立ち退き交渉に応じる住民が増えていった。 良太郎(塚地)とみさお(前田)の夫婦は、子どもが多いということもあって立ち退きに対して断固拒否の姿勢をとっていたが、三木本(鶴見)が交渉の場に現れ、散々嫌がらせといえる発言をして、結果的にみさおは赤ん坊だけ連れて、良太郎と他の子どもたちを置いて“街”を出ていってしまった。 着々と住民の立ち退きが進んでいくが、最後のうっぷんを晴らすかのように半助ら住民が大暴れ。火事も発生するほど混沌とした状況となっていった。 ■子どもたちが立てこもり、島は家に火をつけられる 立ち退き、そして“街”の仮設住宅の解体の日が近づき、“街”のシンボルである大漁旗にみんながメッセージを書き込んだりする感傷的なシーンもあるが、それだけではない。 13年の歴史がある“街”に対するいろいろな思いが交錯し、いろいろなことが同時多発的に起こった。一つは、良太郎の子どもたちがかつ子を人質にして校舎に立てこもるという事件。仮設住宅ではあるが、そこで生まれた子どもたちにとっては“仮”ではなく、自分たちの生まれ育った場所。そこを離れたくないという気持ちが、そういう行動に出たきっかけとなったようだ。子どもたちは自分の思いと消化器をぶちまけたりして、なんとか収めることができた。 六ちゃんが、解体用の重機に乗り込み、いつもの架空のショベルカーじゃなく、実際のショベルカーで街を迷走。いろいろなものを壊して回った。他にも、住人同士が日頃のうっぷんを晴らすかのように小競り合いが起きたりしたが、益夫(増子)が島(藤井)の家に火をつけるという騒動も勃発。家の中に島のワイフ(LiLiCo)がいたが、島が煙の立ち込める家の中に飛び込んで無事救出。逆に、島はワイフにおんぶされて外に出てきた。 ■一年しか住んでいない半助も感情が爆発 仮設住宅に一年しか住んでいない半助。しかも、住人たちのことを報告してお金をもらったり、スパイ的なこともやっていたが、やっぱり愛着が湧いていたようで、「ここより良いとこなんかないと思うんだよ」と本音を吐露。 「おとなしく出ていくか、やかましく出ていくか」と考えていたかと思ったら、解体作業員が大漁旗を乱暴に回収しようとしているのが見えて、「ふざけんなよ!」と飛び蹴りを喰らわせたりして大暴れ。 その様子は解体の様子を取材に来ていたワイドショーのカメラに収められ、番組で繰り返し放送された。 仮設住宅が解体され、“街”が消滅した後、住民たちはそれぞれ別の生活をスタートさせていた。「街の住人だったことを決して口外しない」「どこからですれ違っても絶対に声をかけない」というのが、元住人たちの間の暗黙のルールになっていた。過去を消して、社会に溶け込んでいる仲間の邪魔をしないために。 そういうルールがあると、どこか寂しい感じもするが、この暗黙のルールに関しては、そこまできっちりしたものではなかったのではないかと思われる。 ラストシーンで、カフェで半助が街での出来事を書いた原稿を編集者に読んでもらっているが、窓の向こうにタツヤがいて、半助に合図を送っている。半助の作品は編集者からボツをくらっていたが、背広姿のタツヤは大漁旗の切れ端で作ったネクタイをしていて、半助も大漁旗から作った半ズボンを履いている。 ここに、確かに“街”が存在したことが確認できて、視聴者をホッとした気持ちにさせてくれるものがあった。SNSにも「最後は大暴れだったけど、涙が止まらなかった」「溜まったものが爆発してお祭りみたいだった」「かつ子が『最高!』と叫んだところで涙が出てきた」「重たいテーマでもあったけど、スカッとする気持ちにもなれた」といった共感や感動の声が多く見られたように、いろいろと考えさせられる作品だった。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部