ボルボが生産拠点を中国からベルギーへ EUは中国製EVに関税上乗せ方針 最大48%
欧州連合(EU)の欧州委員会は6月12日、中国の電気自動車メーカーに対し、来月から暫定輸入関税として最大38.1%の追加関税を課す方針を発表。税率は現行の10%に上乗せされ、最大48.1%となる。そんな中、スウェーデンの自動車大手ボルボ・カーズは、電気自動車の生産拠点を中国からベルギーに移転することも明らかになった。 【全画像をみる】ボルボが生産拠点を中国からベルギーへ EUは中国製EVに関税上乗せ方針 最大48% 英紙タイムズによると、ボルボは自社の主力モデル「EX30」と「EX90」の生産拠点をベルギーの工場に移すことを決定し、英国向けモデルの一部組み立ても中国国外に移行することを検討しているという EUが課す関税対象はBYDや吉利汽車などの中国メーカーに加え、米テスラのように中国から欧州に輸出する西側メーカーも対象とされることから、中国の持ち株会社・浙江吉利控股集団傘下にあるボルボは新たな関税を避けるため、欧州のベルギーに生産拠点を移すのではとみられている。 米ブルームバーグによると、ボルボ側はタイムズ紙の報道を否定し、「(ベルギーの都市)ヘントでもEX30を生産するという決定は、できる限り販売地域で生産するという当社の考えを反映するものだ」とし、ベルギーでの追加生産は以前に公表していたものだと強調した。 今回の追加課税のきっかけとなったのは、中国政府が電気自動車輸出を促進するため、自国のEVメーカーに過剰な補助金を支給しているとの疑惑が浮上したことだった。EUではダンピング防止法に基づき調査を進め、その結果、欧州委員会は補助金が不当と断定。6月12日、中国の電気自動車メーカーに対し、7月4日から暫定的に輸入関税を現行の10%に最大38.1%を上乗せすることを発表した。 これについて中国は、EUが中国企業を「抑圧」しようとしていると非難し、自国の利益を守るための行動をすると主張。国営新華社通信は6月9日、中国に対する不当競争の非難は全く根拠がないと、王文濤(おう・ぶんとう)商務相の発言を引用して報じていた。王氏は、「EUが貿易保護主義を放棄し、対話と協力の道に戻ることを望んでいる」と付け加えた。 EUの発表後、中国商務省は「強烈な不満」を表明するとの談話を発表。「全ての必要な措置を断固として講じる」と対抗姿勢を示した。 中国製EVへの制裁関税強化を今年5月に発表したアメリカに続く動きとなる。アメリカは中国製EVの関税を現行25%の4倍にあたる100%への引き上げを決定。これで中国と欧米による貿易戦争の本格的な火ぶたが切られることになると西側メディアは報じている。 英紙ガーディアンによると、中国側はすでに新たな輸入関税に備えているが、専門家は中国政府が報復措置として、コニャックから乳製品まで幅広いEUの対中輸出品に対し、関税引き上げで対抗すると予想している。 先月パリを訪問した中国の習近平国家主席と会談した欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、「世界は中国の余剰生産を吸収することはできない」と警告し、EUは加盟国の産業と雇用の保護に「揺るぎない姿勢で臨む」と述べた。 中国製品のダンピングに関するEUの調査は、過剰生産と国内需要低下の結果、中国がEUに安価なEVを大量に流入させているという疑惑をめぐり、2023年10月に開始された。これは、中国政府による自国メーカーへの補助金について実施した10件以上の調査のうちの1つで、ほかにはEU製品より50%安い価格で中国が輸出している太陽光パネルやヒートポンプ、風力タービンに関する調査も含まれている。 中国は、今回の関税上乗せ決定の正式通知を受け取った後、反証する証拠を今後4週間以内に提出することが求められる。欧州会議は、新たな関税を恒久的に適用するには、今年11月にEU加盟国から支持されなければならない。 一方、中国がEVや太陽光発電設備を不当に安い価格で輸出していることについては、6月13日からイタリア南部プーリア州ファサーノで開かれるG7首脳会議(サミット)でも議論される。
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