2024年、どうなるウクライナ戦争!?【空戦編】
2024年のウクライナ戦争の展開はいったいどうなるのか? 航空自衛隊那覇基地でF4ファントムに搭乗し、302飛行隊隊長を務めた元空将補の杉山政樹氏に、空戦の視座から語っていただいた。杉山氏は、当連載コラムをまとめた書籍『軍事のプロが見たウクライナ戦争』にも登場したプロのひとりだ。 【写真】供与が待たれるF16 * * * ――11月26日、露国防省がウクライナ空軍(以下、ウ空軍)の3機の戦闘機を地対空ミサイルで撃墜したと発表しました。ドニエプル川西岸上空でスホーイ27戦闘機を2機、東部ドニエプロペトロフスク州の上空でミグ29戦闘機1機が、 地対空ミサイルで撃墜されました。このウ空軍をどう見ますか? 杉山 最前線でウ空軍の動きがある程度、掌握されつつあるということですね。露軍がものすごい制空権を獲得できるような防空網を張った、というよりも、不意な遭遇的に前線のところで、露軍の地対空ミサイルにやられた可能性が高い。そうなると、ウ空軍側のパイロットが注意力散漫だったのかもしれません。今まで十分に注意していたところをしていなかった。 ということは、ウ空軍にはベテランパイロットと言うか、経験の深い連中がいなくなったと読み取れます。実際に今、ウ空軍の脂の乗った兵士たちはみな、F16の訓練に行っています。なので、残っているのはロートルと本当にまだヒヨっ子たちだけ。彼らが飛んで、注意力散漫で落とされた。そう見ると良いんじゃないですか。 ――ウ空軍のレベルが...... 杉山 確実に落ちています。 ――その一方で、地上軍は健闘しています。12月22日、パトリオット地対空ミサイルで、スホーイ34戦闘爆撃機を3機撃墜しました。 杉山 首都キーウ辺りにしかないパトリオットを、ゲリラ的にオデッサ辺りに持ってきていた。そこに、「そんなシステムはない」とタカをくくっていた露空軍が舐めて出て来た。そこをピンポイントで待ち伏せ攻撃したのでは、と推測しています。 ――両軍とも地対空ミサイルが活躍している。 杉山 いずれにせよ、今のウ空軍には露空軍のスホーイ30、スホーイ35を空戦で落とす力はありません。 ――以前、露海軍のクリミア半島セバストポリにある司令部に、ウ空軍はスホーイ24に空中発射巡航ミサイル・ストームシャドウを搭載して、見事に司令部を破壊しました。そんな"スホーイ無双"できるパイロットがもういないのですか? 杉山 少ないということです。そして今のままであれば、カードが少な過ぎるのでウクライナは勝てないと思います。戦術局面ではある程度の成果を出せるけど、戦略的に決定的な打撃を与えるとか、露軍戦力の大部分を撃破するレベルは無理です。 ■F16がウクライナに来れば......