中村勘九郎「悔しさをバネに」 中村七之助とともに『明治座 十一月花形歌舞伎』で8年ぶりの明治座お目見え
明治座花形歌舞伎が8年ぶりに復活する『明治座 十一月花形歌舞伎』の製作発表会見が9月27日、都内で行われ、出演する中村勘九郎、中村七之助が出席した。 【全ての画像】『明治座 十一月花形歌舞伎』製作発表会見の模様 平成23(2011)年以来、次世代を担う花形俳優たちが大役に挑む話題性や、歌舞伎に馴染みのない人にも分かりやすいエンターテインメント性に富んだバラエティ豊かな演目を上演してきた明治座花形歌舞伎。令和2(2020)年3月には、中村勘九郎、中村七之助を中心とした座組で『明治座 三月花形歌舞伎』を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い全公演中止に。それから4年の時を経て明治座花形歌舞伎が帰ってくる。 勘九郎はコロナ禍に見舞われ、上演が中止になってしまった当時を「明治座さんには久しぶりに出演させていただくこともありまして、気合を入れて、稽古に励んでいたが、心のバランスを保つのに大変だった記憶がございます」と振り返り、「お客様にご覧いただけず、芝居が不要不急と言われた悔しさをバネにして、4年半やってまいりました。それをお返しする、本当にいい機会だと思います」と意気込みを語った。 コロナ禍については、七之助も「本当に職業を変えなければいけないんじゃないかと本気で考えた」と当時の苦しみを吐露し、「一歩一歩、皆様の力で進んでまいり、明治座に戻ってこられたこと、本当にうれしく思います。一生懸命に勤めます」と背筋を伸ばしていた。 『明治座 十一月花形歌舞伎』は勘九郎、七之助をはじめ、花形公演に相応しい華やかな顔ぶれが揃う。昼の部は歌舞伎の様式美溢れる『車引』、長谷川伸の傑作『一本刀土俵入』、華やかな女形舞踊『藤娘』、夜の部は義太夫狂言の名作『鎌倉三代記』、息もつかせぬ早替わりが圧巻の『お染の七役』と多彩な演目が上演される。 中村屋三代の芸として、長年受け継がれる昼の部『一本刀土俵入』の茂兵衛役を勤める勘九郎は、「父からは、細かく台詞回しなどを教わった」と父・勘三郎さんの十三回忌の年に上演される所縁深い演目にしみじみ。中村屋伝来の小道具も登場し、「わらじとふんどしは祖父からのもので。六代目の手ぬぐいは、使う日にちを決めておかないと、切れてしまうので大変です。ひと月の公演で、2回くらい出せたら。本当に見えないパワーをもらえるような気がする」と先達に感謝を示した。 一方、七之助は夜の部『お染の七役』にて5度目のお染を勤め、早替えにも挑むことに。「床山さん、衣装さん、お弟子さんと息を合わせるのみですね」と舞台裏を明かし、「舞台上でのことは、初役の時に本当に細かく教わりました。稽古好きの父が『また稽古に行くのか』というくらいでしたね。明治座さんは、劇場の導線がいろいろ変わると思いますし、稽古の時に一生懸命話し合いながらやっていきたい」と抱負を語った。 取材・文・撮影:内田涼 <公演情報> 『明治座 十一月花形歌舞伎』 2024年11月2日(土)~11月26日(火) ※11月11日(月)・20日(水)休演 開演時間:昼の部 11:00 / 夜の部 16:00 会場:東京・明治座 ■昼の部 一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)一幕 車引 長谷川伸 作 村上元三 演出 二、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)二幕五場 三、藤娘(ふじむすめ)長唄囃子連中 【配役】 『車引』 松王丸:坂東彦三郎 梅王丸:中村橋之助 桜丸:中村鶴松 藤原時平:坂東楽善 『一本刀土俵入』 駒形茂兵衛:中村勘九郎 お蔦:中村七之助 堀下根吉:中村橋之助 若船頭:中村鶴松 波一里儀十:喜多村緑郎 船印彫師辰三郎:坂東彦三郎 老船頭:市川男女蔵 『藤娘』 藤の精:中村米吉 ■夜の部 一、 鎌倉三代記(かまくらさんだいき)一幕 絹川村閑居の場 四世鶴屋南北 作 渥美清太郎 改訂 於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり) 二、お染の七役(おそめのななやく)三幕 中村七之助早替りにて相勤め申し候 浄瑠璃「心中翌の噂」(しんじゅうあしたのうわさ) 【配役】 『鎌倉三代記』 佐々木高綱:中村勘九郎 時姫:中村米吉 おくる:中村鶴松 母長門:中村歌女之丞 三浦之助義村:坂東巳之助 『お染の七役』 油屋娘お染・丁稚久松・許嫁お光・後家貞昌・奥女中竹川・芸者小糸・土手のお六:中村七之助 鬼門の喜兵衛:喜多村緑郎 油屋多三郎:坂東巳之助 船頭長吉:中村橋之助 丁稚長松:坂東亀三郎 腰元お勝・女猿廻しお作:中村鶴松 山家屋清兵衛:坂東彦三郎 庵崎久作:市川男女蔵