なぜ野党は選挙に負け続けるのか? 冷戦期の意識が抜けない日本政治
選挙で野党が負け続けています。自民党の政権奪還後の国政選挙でも与党の大勝を許し、民進、共産、社民、生活の野党共闘を掲げて臨んだ7月の参議院選、統一候補を立てた東京都知事選でも敗北。上昇の兆しは見えない状態です。なぜ野党は勝てないのか。政治ジャーナリストの田中良紹氏に寄稿してもらいました。 【写真】安倍自民党は選挙で決して「一強」ではない
「政権交代」が起き得なかった冷戦期の日本
安倍政権誕生以来「安倍一強」と言われ、4回あった国政選挙はいずれも「与党圧勝」と報道された。最近の東京都知事選でも野党統一候補の鳥越俊太郎氏は与党分裂選挙にもかかわらず第3位に甘んじた。これを見て野党は永久に政権を奪えないと言う人もいる。本当にそうなのか、何が問題なのかを考える。 冷戦時代の日本に政権交代はなかった。戦後アメリカに占領された日本は西側陣営の一員として反共親米政権であることが運命づけられた。 冷戦が崩壊するまで続く「55年体制」は自民党と社会党の二大政党制だが、そこには政権交代を起こさせない仕組みがある。社会党は議席の過半数を超える候補者を選挙で擁立せず、全員が当選しても政権交代にならない。 社会党は政治体制を変えるより経済に力を入れ北欧のような福祉国家の実現を目指した。それは自民党も同じで「所得倍増計画」に見られるように毎年春に賃上げを行い、終身雇用制と年功序列賃金で従業員の生活を一生補償し、世界に冠たる国民皆保険制度や年金制度の整備に力を入れた。 アメリカのように「小さな政府」と「大きな政府」の対立軸はなく、自民党も社会党も「大きな政府」で、日本は民間企業を官僚機構が指導する社会主義的な体制であった。 そして自民党はアメリカの軍事的要求をかわすため、社会党に平和憲法擁護の役割を負わせ、目に見えぬところで社会党が3分の1を超える議席数を確保することに協力した。自民党は国内の反対が強いことを理由にアメリカの要求をかわし続け、朝鮮戦争とベトナム戦争に出兵させることなく、戦争特需で世界が驚く経済成長を成し遂げた。 アメリカの歴史学者が「絶妙の外交術」と言う自民党と社会党の役割分担は、しかし冷戦が終わると通用しなくなる。ベトナム戦争に敗れたアメリカは反共主義を見直し、フィリピンのマルコス政権と韓国の全斗煥政権を追い落とす。両方とも反共親米政権だが独裁政権をアメリカは許さなかった。