河合優実「本当に演じていいのか、迷いと怖さがあった」暴力、売春、薬物…実在の女性をモデルにした難役に葛藤
取材で再会した同級生からの、「胸に刺さった」言葉
――撮影期間中は、杏とどのように向き合っていたのでしょう。 毎朝、心の中でハナさんと杏にあいさつをしていました。「今日も行ってきます。よろしくお願いします」と。 この作品で扱っているのはつい数年前の出来事で、まだ全然時間が経っていないような感覚なので、「本当に映画にして、杏として演じていいんだろうか」という迷い、怖さがずっとありました。 でも、考えても考えても正解は分からないですし、ハナさんに答えを聞くこともできないですし。だったら、一方的かもしれませんが、私には祈ることしかできないと思い、そんな気持ちで毎日あいさつをしていました。 撮影が終わってからは、ハナさんも杏も、会ったことはないけれど“友だち”のような感覚があります。何か壁に立ち向かわなければいけないときに、自分のなかでちょっと存在を感じるというか。 そして今、映画の公開が近づき、こうして取材を受ける日の朝も「ちゃんと話してきます」と、あいさつをしています。 ――新聞記事として既に報じられた出来事を、映画として届けることの意味は、何だと思いますか? 日々のニュースとして触れるだけだと、その時は印象に残っても、忘れてしまう方も多いかもしれません。でも、映画として観ることで、この出来事が皆さんの記憶に残るのであれば、それこそが『あんのこと』を作った意味だと思います。 私の高校の同級生で、出版社で働いている子がいるのですが、今回『あんのこと』の取材で会うことができて。その子が試写のあと、「これは絶対に届けなきゃいけない作品だと思う」と言ってくれたんです。シンプルな言葉でしたが、胸にとても刺さりました。 『あんのこと』を多くの方に届けて、2024年の今を生きている皆さんがどう思われるか。それを、しっかり受け取りたいと思います。
オフの日は「何もしていないですよ(笑)」ベッドでゴロゴロ
――杏は多々羅や桐野に出会って人生が変わりますが、河合さんにとってそういった人はいますか? 私が出演させていただいている映画『ナミビアの砂漠』(2024年)の山中瑶子監督です。 私は高校生のときに、俳優になりたいと思って進路を変えたんですが、その頃に映画館へ山中監督の作品を観に行き、監督にお会いする機会があって。私にとって人生で初めてお話しさせていただいた映画監督で、うれしくてポスターにサインまでいただきました。 あれから何年か経って、『ナミビアの砂漠』で一緒に映画作りをさせていただけるようになったことも含め、転機だと思います。山中監督は、高校生の頃の私を覚えてくださっていたのですが、思い返すと恥ずかしいし、忘れてほしいなと(笑)。でも、うれしかったですね。 ――『不適切にもほどがある!』(2024年/TBS)に出演して大きな話題を呼びましたが、環境の変化などは感じますか? どこへ行っても「見てるよ!」と言ってくださる方がいて、すごくありがたいなと思いつつ、意識しすぎると自分がブレてしまいそうなので、あまり考えないようにしています。自分がやることは変わらないぞ、と。 でも、いろいろな方に見ていただけて本当にうれしかったですし、何より、お茶の間に流れたことで「家族で見てました!」という声もたくさんいただいて。みんなで一緒に見たものから元気をもらう、みたいなことが起きていたんだと思うと、すごくうれしかったです。 また、これをきっかけに注目していただけたことで、『あんのこと』を含めこれから公開される作品や、これまで出演してきた作品に光が当たるというのも、とても良かったなと思います。 ――多忙な日々かと思いますが、オフの日はどう過ごしていますか? 何もしてないですよ(笑)。ベッドの上でゴロゴロ過ごす日もありますし、映画館やサウナへ行くこともありますし。映画は、あまり忙しくない時期に、ジャンルを問わずいろいろ観に行きます。サウナも、銭湯やスパなどいろいろな施設へ行って楽しんでいます。 撮影:河井彩美 ヘアメイク:上川タカエ(mod's hair) スタイリスト:杉本学子(WHITNEY) 映画『あんのこと』は、6月7日(金)より新宿武蔵野館、丸の内TOEI、池袋シネマ・ロサほか全国公開。 配給:キノフィルムズ (c)2023『あんのこと』製作委員会
めざましmedia編集部