【バレー】ニコラ・グルビッチ連載①「彼はレジェンド」「限界まで僕たちを押し上げる」ポーランド代表選手たちが語るその監督像
バレーボール史における名セッターとして長年活躍
今夏のパリオリンピックで金メダル候補筆頭と評される男子ポーランド代表。2022年から始まったオリンピックサイクルでチームを指揮するのは、バレーボール界における名プレーヤーの一人、ニコラ・グルビッチその人だ。自身も2000年のシドニーオリンピックでは母国のユーゴスラビア(当時)に初の金メダルをもたらした功績を持つ。その人物像そして代表監督としての思いに迫る【その①/全4回】 【動画】VNL2024ポーランドvs.日本ハイライト動画 ニコラ・グルビッチ。現在50歳。バレーボール界に「世界史」という授業があれば、間違いなくテストで出題されるだろう。 そのキャリアを振り返ると、代表ではセッターそしてキャプテンを務め、シドニーオリンピックでは初の金メダルを獲得。当時のユーゴスラビアは内戦の時期にあり、グルビッチやエースのイバン・ミリュコビッチら男子バレーボール代表は国民に光をもたらす英雄となった。 クラブチームでのキャリアも輝かしいものばかりで、イタリア・セリエAを主戦場とし、数々のタイトルを手にした。選手生命は長く、2013/14シーズンをロシア・スーパーリーグの名門ゼニト・カザンでプレーしたのを最後に現役引退。なお、このとき40歳である。 その後は指導者に転向し、セリエAのクラブのほか、2020/21シーズンにはポーランド・プラスリーガの強豪ケンジェジン-コジエ(ZAKSA=ザクサの名称が一般的)をCEVヨーロッパチャンピオンズリーグ制覇に導く。また代表では母国セルビア代表男子を率いて2016年にワールドリーグ制覇、2018年の世界選手権では4位入賞まで押し上げた。 2022年から男子ポーランド代表の監督に就任し、同年の世界選手権で準優勝、翌年はネーションズリーグにヨーロッパ選手権を制覇、そしてパリ五輪予選1位通過を果たし、いよいよ勝負のオリンピックイヤーを迎える。
クレクやシリフカらポーランド代表の面々が語るニコラ・グルビッチとは
プレーヤーとしても指導者としても実績は申し分ないが、現役を引退したのが10年前とあって、その姿を記憶している選手は多い。ポーランド代表のキャプテン、バルトシュ・クレクもその一人だ。2022年の代表シーズンを前にクレクは、このように語っていた。 「私は、まだ彼(グルビッチ監督)が現役のときのイメージのほうが強いんです。ポーランド代表監督としてのシーズンが始まる前から、彼とは連絡を取り合っていました。私自身、彼から学べることは多いでしょうし、一緒に戦えることをとても楽しみにしています」 クレクのみならず、ポーランド代表の選手たちは口をそろえる。聞くと、必ず出てくる単語は“レジェンド=伝説”だ。2024-25シーズンからSVリーグのサントリーサンバーズでプレーするアレクサンダル・シリフカの言葉からは目いっぱいのリスペクトがあふれ出た。 「彼は経験豊富で、バレーボール界においてすべてを勝ち取ってきました。それはコーチとしても同様です。だからこそ、選手たちは100%、監督を信じることができます。彼の要求はとても厳しいですが、そのすべてを達成しようと考えています。それは、僕たちが『いい選手であり、いいチームである』と監督が理解してくれているからこそ。僕たちを限界まで押し上げてくれる点が、何より素晴らしいと感じています」 グルビッチ監督と同じセッターで、ポーランド代表で司令塔を務めるベテランのグジェゴシュ・ウォマチも同じく。 「どのコーチにも違いがありますし、チームにもたらすものは異なります。その中でも彼は自信にあふれ、私たちにも自信をもたらしてくれます。セッターとして学んだことですか? 一つを挙げるのは難しいですが、彼はアドバイスするときも、たくさんではなく、的確なポイントを伝えてくれるんです。ほんとうに彼のようなレジェンドと一緒に戦えることをうれしく思いますし、私たちが正しい道を歩んでいると確信しています」 手にしてきたタイトルは数知れず。その輝かしい功績は立場を変えても、絶大な尊敬を生む。それはニコラ・グルビッチが監督として備える強みの一つと言えるだろう。では、本人はいかなる思いでコーチ業に向き合っているのだろうか。 【第2回へ続く】 (取材・文/坂口功将)
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