従来どおり「全会一致」 都議会正副議長選なぜ立候補制導入はなかったのか
選挙後初召集となった東京都議会臨時会が8日開かれ、新議長、新副議長が選出されました。全国では議長・副議長を決める際に立候補制を採用し、所信表明をインターネット中継するなど、住民にその経緯を明らかにしようとする自治体が増えてきています。しかし都議会は、従来どおり、立候補制ではなく、本会議で自由記名投票を行い、全会一致で選出しました。 「議会改革が1丁目1番地」を掲げて圧勝した「都民ファーストの会」が都議会の最大会派になったはずですが、なぜ立候補制による正副議長選は実施にいたらなかったのでしょう。
選挙後初の都議会正副議長選も従来どおり 選出は「全会一致」というルール
8日に開かれた都議会臨時会は過去同様、地方自治法第107条の規定により、年長議員が臨時議長の職務を行うことが議会局長から説明され、該当する高橋信博議員(自民)が議長席に就き、開会を宣言。「選挙は投票により行います」と告げられ、議場が閉鎖されました。その後、投票用紙の配布があり、あらかじめ臨時議長から会議規則の規定により指名を受けた立会人4議員の立会いの下、即開票となり、出席議員127人全員が投票した尾崎大介氏(都民ファーストの会)が新議長に決定しました。 続いて高橋議員が退席し、新議長になった尾崎氏の進行で同様に副議長選の投票が始まり、同様にこちらも出席議員の全票を集めた長橋桂一氏(公明)が新しい副議長となりました。 実は、都議会の正副議長選は、最大会派から議長、第2会派から副議長を「全会一致」で選出することが慣例となっています。都議会議長選というと、1965年、高額な報酬や年間2000万円の交際費など、名誉と金銭的な特権を与えられた議長の座をめぐり、「東京都議会黒い霧事件」と呼ばれる汚職事件が発覚。地方議会初の自主解散に追い込まれました。都議会史上最大の不名誉であるこの事件後、「議長は2年」、選出は事前の申し合わせで「全会一致」がルール化した、というわけです。
就任希望者による所信表明を実施 実質的な「立候補制」導入が増加
では、ほかの地方議会はどのようになっているのか。議長報酬は一般議員より上乗せされていること、そして何よりも議長になるというのは、議員を長期務めたことによる“名誉職”である、と捉えられてきたこともあり、やはり都議会同様、それぞれの議会の慣例に沿って選出することが続いてきました。 しかし、近年、議長選出時に就任希望者による所信表明の機会を設ける、いわゆる立候補制を取り入れる議会が増えてきています。地方分権の流れを踏まえ、取り組み始めた議会改革の流れと、地方議会が自ら議会運営の基本原則を定める「議会基本条例」の制定が増えてきたことが、背景にあるとみられます。 全国市議会議長会が調べた2016年中の「市議会の活動に関する実態調査結果」によると、議長選出時に議長就任希望者の所信表明などの機会を導入しているのは全市(813議会)中、301箇所と既に37.0%を占めていることがわかりました。 議員の任期は4年ですが、慣例で議長の任期を2年としているところは多く、2015年4月に実施された統一地方選からちょうど2年経過したことしは、多くの地方議会で議長選が実施されています。 ことし3月に山梨県議会基本条例が施行となった山梨県議会では6月、初の立候補者による所信表明を実施した上での議長選が行われたほか、5月に実施された愛知県犬山市議会では、議長選前の予想を覆し、「議員間討議の促進を」と演説した米国出身の議長が誕生するなど、議長選の変化がみられました。また千葉県流山市議会は、本会議で実施している所信表明演説をインターネット中継するというように、立候補制導入によって選出の様子を透明化する動きも起きてきています。