「公表しないほうがいい」はんにゃ川島、腎臓がん宣告で頼った先輩芸人のアドバイス
術後すぐに和田アキ子を人力車に乗せる仕事が
闘病を隠しながら芸能活動を行ったため、手術のタイミングも難しかった。 「テレビの仕事は年末からお正月にまとまった休みがあるんです。そこなら収録もロケもないので、公表せずに手術できるなとお正月休みに手術しました」 開腹手術は無事成功し、抗がん剤治療の必要はなかったそうだが、病気を隠していたため、術後2週間で復帰せざるを得なかった。 「術後、自分が思ったより歩けなくて。退院して最初の仕事が『もしもツアーズ』という番組の京都ロケ。和田アキ子さんを人力車に乗せるという企画でした。事務所に相談して、腰痛ということで人力車は引かずにすみましたが、歩くだけでも痛かったので、隠しながらの仕事は大変でしたね」 手術から1年半を経て、テレビ番組で病気を公表。当時は反響もかなり大きかった。 「すごく悩みましたけど、公表したことで仕事の幅が一気に広がって、僕の人生も大きく変わったと思います」 これまでになかった講演会の依頼など、新しいジャンルで活躍する機会が増えた。 「トークが苦手で、講演会なんてとてもできるタイプじゃなかったんです。そんな僕が今では60分とか90分とか一人で話しますから。たぶん僕の場合、早期発見だったし治療もシンプルだったしラッキーな偶然が重なっているので、がんのエピソードが楽しく話せるのが大きいかもしれません」 講演会の他にも、ダイエット本の出版や、育児の資格を取ったり、だしの会社を起業したりとさまざまな分野にチャレンジしている。 「それまでは芸人が副業みたいなことはしないほうがいいんじゃないかとも考えていたのですが、がんを経験して、やれること、やろうと思ったことは確実にやっていこうっていう思考に切り替わりました。1回きりの人生、明日急に病気になって何もできなくなるかもしれないなって」 つらい時期を乗り越えて、強く前向きになったという川島さん。 「いまだに怖いですけどね。またいつなるんじゃないかっていう思いもありますし。でも逆に“よっしゃ”と思えるかもしれないです。またエピソードがつくれるわって。それくらい笑い飛ばせる強さがあれば、上手に乗り越えられるんじゃないかな」 「はんにゃ.」川島章良●1982年生まれ、埼玉県出身。リズムネタを生かしたコントで人気のお笑いコンビ、はんにゃのツッコミ担当。2014年に腎臓がんであることを公表。現在は、お笑いライブやテレビのバラエティー番組、舞台を中心に活動する一方、がんサバイバーとして講演会などで啓発活動も行う。 取材・文/諸橋久美子