皇位継承に干渉する国連の「決定的な誤り」とは 「保守派の英語による発信力は脆弱過ぎる」
日本の皇位継承システムは女性差別だ――。皇室典範の改正を求めた「国連勧告」に対し、日本政府内で波紋が広がっている。勧告にひそむ「決定的な誤り」を専門家が指摘する。 【写真7枚】当時8歳「愛子さま」と子猫の触れ合い、乳牛に向けられた「雅子さま」の柔らかいまなざし…“動物愛”あふれる天皇ご一家 ***
10月29日、国連の「女性差別撤廃委員会」が日本のジェンダー(社会・文化的な性差)平等へ向けた取り組みについて、最終見解を公表した。 選択的夫婦別姓の導入や同性婚容認などを求めたほか、皇室典範の規定について「皇位継承における男女平等を保障する」よう改正を勧告したのだ。 「皇室典範は1条で“男系男子が皇位を継承する”と定めています。この規定が日本も締約する“女性差別撤廃条約の目的や趣旨に反する”と指摘されました」(全国紙政治部記者) 翌30日、林芳正官房長官は「強く抗議するとともに削除の申し入れを行った」と不快感を表明。それというのも、 「勧告に先立つ審査の場で、日本側は“皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項で、条約に照らして取り上げるのは不適切だ”と反論したにもかかわらず、真剣に考慮された形跡がなかったのです」(同)
リベラルなエリート集団
国連が日本政府の意向を無視したのはなぜか。国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏がこう話す。 「欧米を中心としたリベラルなエリート集団という性質を持つ国連内では“自分たちのイデオロギーを世界に広めるのが善”と考える傾向が見られます。日本という国を知悉(ちしつ)しているわけではない彼らが今回、皇室典範に言及した背景に、そんな彼らの思惑に沿う情報提供が事前に日本側からあったためと指摘されています」 実際、10月17日にスイス・ジュネーブにある国連欧州本部で日本への対面審査が行われる前、「一部の市民団体やNGOがジュネーブに入って委員に直接、要望を伝えた」(前出・記者)ことが確認されているという。
日本外交の貧弱さ
渡瀬氏が続ける。 「リベラル系の人々は英語での対外発信を得意として積極的な一方で、日本の保守派の英語による発信力は脆弱のひと言。国際機関にとって英語でない訴えは、存在しないのと同じです。つまりリベラルな人々の声が“日本の声”として国連側に認識された可能性は否定できません」 実は安倍政権だった2016年の審査時にも、皇室典範の改正を求める勧告案が取り沙汰されたが、この時は日本政府の強い抗議によって記述が削除された経緯がある。 「今回の一件は、日本外交の貧弱さを象徴するものです。外交的には勧告を出された時点で負け。そうなる前に日本側の主張の正当性を相手に納得させる交渉スキルの獲得が、課題として浮上しています」(同)