【バレー】河野裕輔のエール!第25稿 サントリー世界クラブ銅メダルや春高を俯瞰して
元日本代表でJTサンダーズ広島でも活躍した河野裕輔さんによる男子バレーボールコラム。今回はサントリーサンバーズの世界クラブ銅メダル獲得とVリーグのレベル、そして春高についてなど。 皆様明けましておめでとうございます。河野です。 まず最初に元日に起こりました能登半島地震において被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに1日も早い復興をお祈りさせて頂きます。 さて、この年末年始皆様はいかがお過ごしでしたか? Vリーグ、世界クラブ選手権、天皇杯とバレーボールファンにとっては非常に忙しい年末だったのではないだろうか。かくいう筆者も目と体が足りない日々で非常に充実していたことをご報告させていただく。 ■Vリーグから世界トップクラスへ 皆様もご存じであろう「サントリーサンバーズの世界クラブ選手権銅メダル獲得」というニュースは、衝撃と大きな賞賛をもって伝えられた。Vリーグ優勝チームがアジアクラブ選手権を勝ち抜き、ヨーロッパ代表、南米代表と五分にわたりあい銅メダルを獲得したという日本男子では初めての快挙だ。サントリーサンバーズの皆様におかれましては、過密スケジュールの中インドまで遠征し非常にハイレベルなゲームを繰り広げていただいた事、心から感謝と拍手を送りたい。 そしてこの快挙を成し遂げられた要因のひとつに、Vリーグの全体的なレベル向上が止まらない事が挙げられるだろう。攻撃的なサーブからリードブロックによるトータルディフェンス、シンクロ攻撃の標準装備などはもはやV1レベルでは常識ともいえる。今回はこの「常識の変化」の後に何が起こっているのかに注目してみた。 ■戦術の変化の先にあるもの 昨今のVリーグ男子を見ていると、お互いのシステムの崩しあいという様相はあまり変わらないが、崩し方において若干の変化というか必要なスキルのレベルアップが行われているのではないかと感じた。それはアウトオブシステム時に顕著に表れている。 当然インシステム時は「良い状態」で攻撃できるためオフェンス側のチームにおいてストレスはあまりかかっていない状態といえる。しかしアウトオブシステム時の「よくない状態」の時の処理の幅という部分が各チームというより選手個人の差になっており、その「よくない状態」を打開する力が勝敗に対して大きなウェイトを占めていると感じた。 当然インシステムの幅も大きな要素だがこのアウトオブシステムにおける状況打開力という部分が大きな差を生んでいるのではないか。オフェンス/ディフェンスシステムの構築やサーブ戦術の徹底という時代からそこを土台としたアウトオブシステムでの得点力という部分で勝敗が決まってきている試合が多いように思う。例えばリバウンド、無理して打たずにリバウンドを取ることで相手にストレスを与えながら自チームはインシステムの攻撃につなげることができる。例えばハイセットのセットアップ、セッターはもちろんのことセッター以外がセットアップする場面においても、正確性とともすれば意外性を出さなければならない。 注:インシステムは当初チームとして予定していた攻撃が可能な状態、アウトオブシステムは予定が崩れた状態を指します。 具体的には現代バレーだとインシステム≒シンクロ、みたいな感じになりますが、チームによっては時間差攻撃なども立派なインシステムです。 またシンクロを予定していたがレセプションが短くなりすぎてハイセットでしか攻撃できないなどはアウトオブシステムになります。 またポジション問わず「総合力」が試される場面も増えてきている。MB(ミドルブロッカー)はショートサーブに対するレセプションやディグ、リベロもセカンドセッターとしての役割をこなす。ふた昔前に流行した「完全分業制」はもはやトップにおいてはあまり見られなくなり、全ての選手が全てのプレーをこなす「トータルバレーボール」ともいえる時代に突入している。 MBはクイックとブロック、やOP(オポジット:セッター対角で男子ではほぼサーブレシーブを免除される攻撃を重視したポジション)はオフェンスにリソース全振り、という事ではなくバレーボールすべての要素を高いレベルで表現できるプレーヤーが求められるという事だ。