四季南陽、温泉リゾート計画断念 費用負担増で施設返還、改修は白紙に
南陽市の旧ハイジアパーク南陽を中心にした温泉リゾート開発を目指してきた「四季南陽」(奥山清行社長)は21日、計画を断念すると発表した。建築資材の高騰、改修費の負担増などが要因で、市から譲渡された施設を返還することで双方が合意した。今後の改修計画は白紙となった。 奥山氏と白岩孝夫南陽市長が同日、同市のシェルターなんようホールで共同会見を開いた。奥山氏は新型コロナウイルス禍に伴う情勢の変化、建築資材の高騰に加え、改修中だった旧ハイジアパークからアスベスト(石綿)が検出されたことを問題視。「アスベスト含有建材を撤去した場合、費用が高額になり経営は困難」と判断し、市と2021年9月に結んだ施設の売買契約について、今年4月に解除を申し入れた。 契約の締結以降、四季南陽は改修費などに約1億3千万円、市は修繕に伴う補助金など約6千万円を拠出したという。奥山氏は「多くの期待に応えるべく夢に燃えていたが残念な結果となり、心から申し訳なく思っている」と無念さをにじませた。一方で「南陽を世界ブランドにする」との思いに変わりはなく、同社を継続させ、新たな取り組みを模索していくという。
施設の今後について、白岩市長は「民間のノウハウを取り入れたいという方針は変わらない。まずは庁内で検討していく」と述べた。 旧ハイジアパークは温泉やレストラン、会議や宴会で使えるホールなどを備えた大型施設でバブル経済末期の1992年にオープン。赤字続きで経営難となり2021年3月に閉館した。市は民間事業者への譲渡を目指すことを決め、奥山氏が再生に向けて名乗り出た。 「なじみ深い施設」残念がる市民 工業デザイナーの奥山氏を中心に建築家の隈研吾氏、アル・ケッチァーノ(鶴岡市)の奥田政行オーナーシェフといった発信力の高い3人がそろい、世間の注目を集めた南陽市のリゾート再生計画は幻に終わった。市民からは残念がる声が聞かれた。 旧ハイジアパークの営業当時、週2回ほど利用していた市内の農業阿部勇郎さん(52)は「なじみ深い施設。再開したらまた出かけようと思っていたのに」と話した。 地元経済界でも落胆の声が広がった。製造業を営む60代男性は「せっかくの建物。屋内遊戯施設などに活用する手はあるのではないか」と提案した。