岡田監督をしびれさせた門別vs中野の全球直球勝負と「クローザーなんか任せられへん」とあきれさせた湯浅の154キロ
一方、対照的に課題を浮き彫りにしたのが湯浅だった。 3番手として5回から登板したが、森下、渡邉諒、島田に3連打を浴び、簡単に1点を失った。最速は154キロをマークしたがファウルや空振りを取れない。 昨季はWBCに選ばれた影響と怪我が重なり、2軍調整の期間が長く、15試合にしか登板できなかった。0勝2敗8S、防御率4.40の成績は不本意だったのだろう。オリックスとの日本シリーズで、劇的な復活を遂げ、オフに米国でトレーニングを積み、新たなフォームに取り組んだ。二段モーションをやめて、ショートアームにして、上から角度をつけて投げ下ろすようにフォーム改造したが、それが今のところフィットしていない。この日の実戦を見る限り、打者からはボールがみやすくなっているのかもしれない。 岡田監督は、ブルペンでの投球を見ているときから、「ストレートがいっていない」と湯浅の出来を不安視していた。この日、湯浅は、1球ごとに電光掲示板に示されるスピードガンを確認していたが「後ろのピッチャーは喜怒哀楽を出したらあかんのや」と、そのマウンドでの姿勢にも疑問を投げかけた。 「あかんやろ。グランドに帽子を投げているようなピッチャーをオレは使えへんよ。悔しかったら打たれへんように投げたらええ。お前が悔しいんとちゃう。チームが悔しいんや」 岡田監督が示したのは、昨年6月3日のロッテ戦での湯浅のワンシーンだ。 5-2で迎えた9回に登板したが、守りのミスなどもあって3点のリードを守れず同点にされ、マウンドを降りる際に帽子をグラウンドに叩きつけていた。 岡田監督がストッパーに求めるのは、最悪のケースを常に考える用心深さと、岩崎のような相手に心理をわからせないポーカーフェイス。 岡田監督は「一昨年までのゼロセーブのピッチャーよ。WBCに選ばれたからクローザーとちゃうよ。簡単に考えていたらあかんよ。今日は、何か月ぶりかの実戦で、結果なんか求めていなかったけど、ピッチャーはブルペンを見てたらだいたいわかるからな。今の湯浅にクローザーなんか任せられへんよ」と厳しく突き放した。 昨季は岩崎が絶対守護神として60試合に登板し35セーブでタイトルを獲得した。桐敷、岩貞、島本、石井、加治屋、ケラーらのブルペン陣が充実し、湯浅が不在でも勝利方程式を組むことができた。だが、岩崎の32歳という年齢と蓄積疲労を考慮すると、今季は湯浅の復活に期待する部分が大きい。それだけに岡田監督は、あえて湯浅に過激なハッパをかけたのである。 先発の門別とブルペンの湯浅。実戦の初戦で明暗を分けた2人が連覇へのカギを握る虎の重要な“新戦力”である。