「人生には救いがある」“借金総額50万のパチンコ好き”が一括返済できた「夢のある理由」
〈「1つは努力して完済、2つ目は破産、そして3つ目は…」“借金で首が回らなくなった人”の末路〉 から続く 【写真を見る】「見るも無惨…」“借金で首が回らなくなった人”の末路 「今まで悪かったね。都合ついたんで、まとめて払いに行くよ。明日行くんで、明日までの利息含めた支払い総額、教えてもらえる?」――パチンコがやめられず数十万の借金を抱えてしまった、新井さん。ところが、そんな彼からいきなり「一括返済」の提案が。返済が何度も遅れるほどルーズだった人間に何が? 消費者金融業界で20年間働き続けた、加原井末路氏の新刊『 消費者金融ずるずる日記 』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編 を読む) ◆◆◆
貸付金49万8000円の新井さん
毎日が、延滞客の管理と督促。こうした日々をすごしているとふと思うことがある。 「この債務者たちは、永遠に借りては返してを繰り返す人生を送っていくのだろうか? そして、私も来年の今ごろも、再来年、5年後、10年後も、今日と同じことをしているのだろうか?」 そんな気の迷いはすぐに日常の業務の中にかき消されていく。 朝8時半、出社するとすぐにパソコンの端末を叩き、長期延滞者をリストアップする。本日、私が架電するのは2カ月オーバーの延滞者リストだ。このクラスになると5件に1件電話に出ればよいほうだ。ダメ元でスピーカーにして架電する。 「は~い。もしも~し」 延滞者らしからぬ軽快な口調。このレベルの延滞者たちはたいていどんよりした口調のため、思わず違う人にかけ間違えたのかと、ナンバーディスプレイをリストと照合して確認する。「貸付金49万8000円、新井さん」、やはり間違いない。新井さんは、1~2カ月遅れの常連。電話をしても平気でパチンコ屋の音がバックに聞こえる状況で、「今、確変中だからかけ直す」と言ったきりなしのつぶてだったり、「支払いに行ったけど遅い時間でATMが閉まってた」などと子どもじみたウソを平気でつく人だ。 「『は~い』じゃないよ。支払いどうなってるの? 2カ月も溜めておいて、連絡もなしじゃ、一括返済の請求を出すよ」 脅し文句で一発かますと、新井さんはあっさり「いいよ~」と言う。 可哀想に、借金取りに追い詰められて、とうとう頭でもおかしくなったのか。 そんなことを思っていると、「今まで悪かったね。都合ついたんで、まとめて払いに行くよ。明日行くんで、明日までの利息含めた支払い総額、教えてもらえる?」 私は慌てて電卓を叩く。 新井さんの貸付残高は元金が49万8000円。年利29.2%だから49万8000円×29.2%として、年で14万5416円。これを日割りで計算すると14万5416円÷365日で1日当たり398円の利息。前回返済日から60日経っているので、本日までの利息は398円×60日=2万3880円。元金49万8000円+利息2万3880円=52万1880円。 「52万1880円です」と敬語でお伝えし、受話器を置いた。 あのパチンコ狂いの新井さんが一括返済? それを隣で聞いていた竹原さんも紙パックのマミーをぐびりと飲んで、「あのオヤジが一括返済? どこかの会社でまとめたんじゃねえのか?」。周囲もざわつきだす。