福本莉子のセットツアーも!神社仏閣の持つ重厚感×西洋のゴージャス…美術デザイナーに聞く『全領域異常解決室』セットのこだわり
「全領域異常解決室」へと誘う長い廊下のこだわり
――実際、廊下はかなり長く、だんだんと「全決」へ誘われるような感じがします。 その薄暗い廊下を「何があるんだろう」と歩いていってドアを開けると、異世界のような空間が開けるという狙いはありました。廊下の雰囲気についても台本にあったのですが、階段の横にある布は、平安時代のような雰囲気ですし、廊下に並ぶ調度品も和風のものと洋風のものを混ぜ、視覚的に目につくようなものを入れました。 ――そして、「全決」へ入ると、パッと広い世界が開けます。この部屋は、どんなコンセプトでデザインしたのですか? 一番大事にしたのは、入ったときのスケール感です。台本では、完全に部屋として仕切られていたのですが、壁を作るのではなく、空間的につないだほうがいいだろうと考えて、何となくの仕切りはありながらも、奥まで見渡せるセットというものをイメージしました。 ――神社仏閣のような重厚感がありながら、外資系ホテルのようなラグジュアリーな雰囲気もありますね。 ホテル的な雰囲気というのは、監督からの希望でもありました。日本ではあまり多くないですが、ヨーロッパでは、古い寺院やお城をホテルに変えているようなところが非常に多く、いろいろと調べるなかで、そういった物件の写真などもイメージソースにしていきました。
興玉(藤原竜也)と小夢(広瀬アリス)のデスクが同じ方向に配置された理由
――ライティングも印象的ですが、色味にはどんなこだわりがありますか? 実際、ライティングをするのは照明部の範疇(はんちゅう)ですが、僕ら美術の中でも、どういう色味にしようかと考えたときに、明るい部分はありつつも、全体的にはダークトーンに寄るという意識で作っていきました。 ――家具や調度品の配置についてはいかがでしょうか? 興玉と小夢のデスクの配置は、特徴的かもしれません。一般的に捜査本部の個人のデスクやテーブルは向かい合わせにするものですが、今回は、2人の(役柄での)距離感と(撮影上の)画撮りも考えて、同じ方向に少し距離を空けて配置しました。 そうすることで、正面から撮れば、ソファスペース、バーカウンターが見え、その奥に間接照明で光るキャビネットまで見えますし、横から撮ったら、捜査ボードがドンと見え、そのボードもちょっと光っている…そういう狙いで考えました。 ――興玉がプロテインをつくったり、宇喜之民生(小日向文世)が料理をしたりするバーカウンターは、一般的なキッチンほどのスペースがあります。 もともとはあまり目立たせる感じではなかったんですけど、打ち合わせをするなかで、どんどん大きくなっていきました。シンクは壁面にあることが多いのですが、そこでお芝居をしようとすると、役者さんが背を向けることになり、撮影がしにくいんです。今回、シンクをカウンターのほうに持ってくることで、役者さんがこちらを向くことができ、対面でのお芝居をしやすくしました。 そういう手法はよくやるんですけれども、ホテルのようなイメージということで壁面にキャビネットや調度品をドンと置いたことで、(奥行ができて)サイズアップしていったというわけです(笑)。