障害関係なく遊べる公園を 「インクルーシブ遊具」設置へ資金募る
障害の有無にかかわらず、誰もが楽しむことができる「インクルーシブ遊具」の導入が各地の公園で進んでいる。ただ障害のある子を持つ保護者からは「近くにない」との声も上がる。行政だけでなく、設置を広げようと民間企業も動き始めている。 インクルーシブ遊具は2020年、東京都世田谷区の都立砧(きぬた)公園の一角に日本で初めて置かれた。それ以降、徐々に各地に広がった。メーカー各社からも多様な遊具が展開されている。 名古屋市中川区にある内田工業は多様な遊具の企画、製作を手掛ける。ハンモックタイプのブランコは自力で座ることができない障害を持つ子どもが寝っ転がって利用でき、一人で乗るのが怖い子も友達や親と腰掛けることができる。サンドテーブルと呼ばれる砂場は、車椅子に乗った状態で遊ぶことができるようにテーブルに砂を置く工夫をしている。 一方で遊ばない遊具もある。コージートンネルと呼ばれる遊具は、初めての場所や騒がしい場所でパニックになってしまう子が気持ちを落ち着けるための場所だという。同社は「いろんな選択肢があって、お気に入りの遊具が見つかる」と魅力をアピールする。大阪や奈良など関西の公園にも同社の遊具が置かれている。 各地で導入は進んでいるが、4人の息子を育てる山田麻耶さん(44)=京都市伏見区=は、四肢まひなどの障害を持つ四男の遊び場探しに苦労する。山田さんは「息子たちは年齢差もあり、全員が楽しいと感じる公園が少ない」と感じている。車椅子に乗ったまま遊べる遊具が少なく、府外の淡路島にある国営明石海峡公園(兵庫県淡路市)やたじりっち広場(大阪府田尻町)まで行くこともある。 京都市内にインクルーシブ遊具のある公園もあるが、順番待ちになることが多く、ゆっくり遊べないことも。「せめて遠いところへ行かなくても、近くにあれば」と山田さん。京都市で「インクルーシブ公園」の設置を目指す任意団体「ミラスタ!」の一員として今は活動する。 導入が進まない理由として上げられるのは高いコストだ。通常の遊具と異なる形状にするための加工や材料に経費がかかるという。インクルーシブ遊具を設計する東京のメーカーは「予算と比べて高くなり、(行政が)導入を諦めるケースもある」と明かす。京都市は「ブランコの設置経費は通常の遊具に比べて2、3倍になることもある」といい、設置の障壁になっている。 そうした実情もあり、市が運営する公園としてまだ導入事例がない京都市山科区では、病院や介護施設を運営する洛和会ヘルスケアシステム(同区)が、クラウドファンディング(CF)での設置を目指す。 同社の矢野裕典理事長は「障害のある子の遊ぶ場所が少ないことが知られていない。考えるきっかけになれば」とCFを始めたきっかけを語る。障害のある子と接する機会がある病院でもインクルーシブ遊具を知らない人がいたといい、「企業が設置する動きが広まってほしい」と願う。 CFの支援の応募はQRコードから。26日午後11時まで受け付けている。【水谷怜央那】