不倫スキャンダルで窮地に陥った葛西を救った”東大時代の友人”…「極左の過激派」が潜む労働組合をも圧倒する驚異的な「人脈」
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第32回 『「俺、もう辞めるわ」…安倍元首相に「国士」とまで言わしめた葛西敬之を退任寸前まで追いやった壮絶な「ネガティブ・キャンペーン」』より続く
会社の金で「ガードマン」を雇う
スキャンダルの暴露を受けて、葛西はいっときは会社を辞める覚悟までしていたという。国鉄改革で苦楽をともにしてきた松本正之たち、側近が辞意を思いとどまらせたようだ。葛西が踏みとどまれた理由について、JR東海関係者はこう解説してくれた。 「葛西さんにとって大きかったのは、捜査当局の存在ではないでしょうか。葛西さんには東大時代に仲良くなった検察や警察の友人がいて、法的にサポートしてもらったように聞いています。松崎や革マルを相手にするときはそういうガードマンが必要でしょう。彼らを雇うにしても個人では負担できないから、会社としてやらなければならない。なにしろ旧動労系のJR東日本労組は資金が潤沢です。5万人ぐらいの組合員がいて、だいたい1人あたり10万円前後の組合費を集めていましたから、それだけで毎年50億円くらい入ってくる。それを活動費として使えるのだから、とてもじゃないけど個人では太刀打ちできません。だから、会社として対応した。それが功を奏したのではないでしょうか」
警察との「パイプ」
革マル派の影がちらつく組合に、警察、検察のパイプを使って対処したという。のちに詳述するが、葛西は警察組織をことのほか重視するようになる。それはこのときの成功体験があったからであろう。革マル派は言うにおよばず、中核派や革労協など、国鉄時代から労働組合運動に極左の過激派が潜んできたのは公知の事実だ。彼らの活動は警備、公安警察の監視対象でもあった。それだけに民営化されたJR各社では警察の天下りを受け入れ、当局とのパイプを保ってきた。それはJR東日本でも同じだ。 だが、JR東日本では、初代社長の住田正二や2代目社長の松田昌士たちが旧動労の松崎と手を切れなかったとされている。その理由について、先の東海関係者に尋ねてみた。 「もとはといえば松田さんは労務の経験もあり、鉄労とも親しかったんです。それで、葛西さんが動労と手を組んで改革をやっていこうという方針を立てると、松田さんは『葛西は動労を甘やかしている。けしからん』と言い、批判の急先鋒になっていった。ところが、東日本に行って労政を担当するようになると、方向転換して松崎と手を組んだ。その理由はいまだにハッキリしません」 革マル派の松崎と闘ったJR東海の葛西に対し、JR東日本の松田は松崎の脅しに屈した。マスコミやJR関係者のあいだでは、定説のようにそう語られる。だが、それはあくまでJR東海側から発した見方といえる。一方で松田本人は、松崎を信用し労使協調路線を歩んだだけだと言ってきた。そのどちらも説得力に欠ける。 『「近所のプール指導員が孫に無理矢理…」「プロパンガスの周辺にマッチが…」労働組合と対立する陰で社長家族に忍び寄る恐怖の影』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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