税制改正で2024年からの「暦年課税」と「相続時精算課税」制度どう変わった?
贈与税の計算方法には、原則的な計算方法である「暦年課税」と、届出書を提出することで選択できる「相続時精算課税制度」があります。 従来、特殊なケースを除き、暦年課税制度で贈与税を計算したほうが税法上有利になる場合が多かったのですが、2024年1月からの税制改正により状況が一変します。 2023年までと2024年からの制度を比較しながら「暦年課税」と「相続時精算課税」制度どちらが有利なのかについて見ていきましょう。
2023年までの「暦年課税」と「相続時精算課税」制度
2023年までの「暦年課税」と「相続時精算課税」制度を、図表1にまとめました。
<図表1> 相続時精算課税制度は、手続きに手間と費用が必要なわりに、暦年課税制度のような110万円の控除はありませんでした。 贈与時に2500万円の特別控除はありますが、将来的に贈与者の相続が発生した際、制度を選択した贈与財産を相続財産に足し戻す必要があります。要するに相続時精算課税制度は、贈与税が非課税になるものの相続税は課税され、税金の先送りにしかなりません。 そのため、大多数の人が相続時精算課税制度よりも暦年課税制度を選択していました。国税庁の「令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、2022年において相続時精算課税制度を適用した申告者数が、4万3000人に対して、暦年課税制度を適用した申告者数は45万4000人でした(※)。
2024年からどのように変わったのか
2024年から施行された税制改正では、ひと言でいうと暦年課税制度は納税者にとって不利で、相続時精算課税制度は有利な改正になりました。それぞれの制度の改定について、大きなポイントは次のとおりです。 ●1.暦年課税制度 亡くなる前に贈与を行った場合には、その贈与がなかったものとして贈与額を相続財産に加算し、相続税の計算を行う制度のことを生前贈与加算といいます。2023年まで3年以内だった期間が、2024年1月1日から7年以内に延長されます(注1)。 そして、図表2のとおり2027年以降に発生する相続から影響を受けます。生前贈与加算期間の延長は、納税者にとって相続税額の負担増になります。