【北鎌倉トレッキングルポ:前編】住宅街に突如現れる〝じゃないほう〟の切通しを歩く
切通しとは、山を切り開いて人や馬が通れるようにした道のことです。 三方を山に囲まれた要害の地、鎌倉にはあちこちに切通しがあります。とくに有名なのが、『吾妻鏡』に記述のある名越切通(なごえきりどおし)や朝夷奈切通(あさいなきりどおし)など、「鎌倉七口」と呼ばれる7つの切通し。しかしそれ以外の切通しだって、趣があってなかなか素晴らしいのです。 【写真】あえてマイナーな切通しをいく鎌倉トレッキングを見る(全6枚)
「かまくら景観百選」に選定されている高野の切通し
今回訪れるのは、鎌倉七口〝じゃないほう〟の切通しの中でもマイナーな高野の切通しと大船の切通し。 JR北鎌倉駅の下り線ホームにある「大船寄り臨時改札」を出て、線路沿いをまっすぐ歩いたら、右手に見えてきた赤い洞門をくぐります。異世界への入口のような素掘りのトンネルを抜けたあとは、グーグルマップをチェックしながら住宅街を歩いていきます。 10分ほど歩くとアスファルトの道が途切れ、その先には未舗装の土道が伸びています。ここが1999年(平成11年)、「かまくら景観百選」に選定された高野の切通し(長窪の切通し)です。 切り立った崖の高さは3~4mといったところでしょうか。人がぎりぎりすれ違える幅の道を進むと、苔むしたところあり、崖伝いに木の根が這っているところありと、雰囲気もバッチリです。鎌倉市内のほかの切通しと比べて規模は小さいものの、とても美しく、そして歩きやすいのも魅力的でした。 一気に中世へタイムスリップしたような気分を味わった高野の切通しを通り過ぎると、ふたたび住宅街へ。パッと目の前が明るくなり、いつもの世界に戻ってきた! という不思議な安堵感に包まれながら、次の切通しを目指します。
古道の古き良き雰囲気を味わえる大船の切通し
ふたたび住宅街を歩くこと約5分。白とレンガ色の大船町内会館が目に入ったら、そろそろです。ここからは少しわかりにくいため、用心深く行きましょう。 まずは会館の向かい側に横断して、そのまま直進した先にあるトンネル、これがチェックポイントです。通り抜けずにすぐ脇の細い小道に入り、駐車場のフェンスを左手に見ながら道なりに進みましょう。 U字に折り返す分岐点が出てきたら、迷わず鬱蒼とした道のほうへ。その先には2つ目の目的地、大船の切通しがあります。 トンネルの上にあるこの切通しは、近隣住民の散歩コースになっているのでしょうか。先ほどの高野の切通しよりも道幅は広く、人工物が視界に入ってこず、落ち着いた雰囲気が漂う心地よい場所です。 切通しが終わったと思ったら、そのまま竹林ゾーンに突入。すぐそばに住宅街が広がっているはずなのに、まるでどこかの山にハイキングにやってきたみたいです。 切通し探訪のあとには、鎌倉市内で2番目に標高が高い六国見山(ろっこくけんざん)に向かいます。前編はここまで、続きは後編にて──。
林 加奈子