大谷翔平、アクシデントも悲願達成!左肩負傷の影響、ジャッジとのMVP対決を徹底分析!【コラム】
左肩負傷はどの程度影響したのか
このシリーズで大谷選手が外野に飛ばした打球につき、負傷前後での打球内容の相違を、投手の投球と合わせ次表に整理した。 打球速度、飛距離とも負傷後に低下している。同一球種間で比較するとその傾向がわかりやすい。例えば、第1戦、第2戦にゲリット・コール投手やカルロス・ロドン投手から打ったフォーシームと、第5戦にコール投手から打ったフォーシームは、球速はほぼ同じである。
第4戦第2打席の大谷翔平
しかし、後者の打球速度は、前者のそれと比較して、15マイル時前後、時速換算で20キロ以上低下している。負傷後に唯一300フィート代後半近く(約120m近く)の飛距離があった第4戦のルイス・ギル投手からの打球は、打球角度からみて、左肩の影響がもしなければ本塁打になっていた可能性もある。 この投球は86.6マイル時(約139.4キロ)のスライダーで、投げられたのは図の「2」のコースである。打球はセンターから左寄りに飛んだが、本来の状態ならば右中間寄りに飛んでいた可能性が高い。
第3戦第1打席の大谷翔平
一方で、本来の状態でなくとも存在感を示すのも大谷選手だ。負傷後初打席となった第3戦の第1打席がその好例である。対戦したクラーク・シュミット投手の投球コースは図の通りで、大谷選手に恐れをなしたのか、明らかなボール球しか投げることができていない。 さらにそのシュミット投手は、この四球を出した後、満足に走れないはずの大谷選手の足を警戒すぎてしまう。大谷選手がもたらすプレッシャーが、その後のフリーマン選手の先制2ランを呼んだかもしれない。
ジャッジとのMVP対決の結果は…?
そして、戦前注目を浴びたヤンキースのアーロン・ジャッジ選手との「直接対決」だ。両選手とも不振に苦しんだ感のあるこのシリーズの最終結果は以下のようになった。 ・大谷翔平 :19打数2安打0本塁打 OPS.385 ・アーロン・ジャッジ:18打数4安打1本塁打 OPS.836 打撃の数字だけ見れば、第4戦から状態を上げた「ジャッジの勝ち」となるだろう。一方、チームリーダーとなる打者にとって、不調時であっても次打者につなぎチームに貢献することが重要だ。 この観点に立つと、両選手とも状態が上がっていなかった第3戦までについていえば、「大谷の圧勝」といえる。 第3戦までの安打数は、大谷、ジャッジ両選手とも1だが、これに現れない内容が実は大きく違っている。これは以下の通りだ。 四死球数:大谷3、ジャッジ1 進塁打数:大谷3、ジャッジ0 三振数:大谷3、ジャッジ6 安打が出なくとも、状態が悪くとも大谷選手はボールを選び、走者を進めて次打者につなぐことができていたのだ。 大谷選手の3つの進塁打のうち2つ(走者数で4人中3人)が、得点につながっている。選んだ四球の1つ(前記シュミット投手から選んだもの)も自らの得点につながった。 第1戦でトミー・ケンリー投手からライトに打った二塁打は、高い打球速度のために単打になる可能性もあったが、ホアン・ソト選手の打球処理が遅れた隙に二塁を陥れ、グレバー・トーレス選手がその送球をはじいて見失った隙に乗じて三塁までも陥れた。ムーキー・ベッツ選手の同点犠牲フライで自ら本塁を踏んだのはその直後だった。 打てない中でもどのように次打者につなぎチームに貢献するか…これは、第3戦までボール球を振り回すだけだったジャッジ選手に欠落していた点だ。 チームリーダーとしての「直接対決」はどちらが上かは、言うまでもないだろう。キャプテンを名乗るジャッジ選手に比べ、大谷選手の方が高いキャプテンシーを発揮していた。 この目線での直接対決での「完勝」が、ドジャースが3連勝してシリーズを優位に進める重要な要因になったはずだ。 個人成績では満足できる数字ではなかったが、大谷選手本人にとってはチームが勝ち自らも貢献することが第一だったはずだ。 そのための最大限の尽力がベッツ、フリーマンら他の選手につながり、最大の成果を得た。そして何より、大谷選手自身が、MLB入りして初めて、10月にいるべき場所にいることができた。この経験は本人にとって何にも代えがたいだろう。 来年も再びこの夢舞台に立てるのか?そしてこの夢舞台でのマウンドにも立てるのか?やがて、新たな長い道のりが再び始まる。
ベースボールチャンネル編集部