Little Black Dressが示した“ディーバ”としての存在感 誕生日前夜、BLUE NOTE PLACE公演を振り返る
シンガーソングライターの遼を中心とするソロプロジェクト・Little Black Dressが11月2日、3日、東京・恵比寿のBLUE NOTE PLACEにてライブを開催した。本稿では、遼の誕生日前夜となった初日の公演をレポートする。 【画像】六本木の街をバックに魅せる華麗なLittle Black Dress 6月にリリースした8曲入りのアルバム『SYNCHRONICITY POP』は大胆にシティポップへと舵を切った作品で、今までになく都会的な洗練を感じさせるものだった。この日は同アルバムの収録曲から「SPICE OF LIFE」「DRIVE OUR DREAMS」「恥じらってグッバイ」の3曲を間髪入れずに披露し、Little Black Dressの最新モードを会場全体に響かせた。外はあいにくの雨であったが、この場所だけは真夏の浜辺のような心地好い涼風が吹いていた気がした。 会場となったBLUE NOTE PLACEはブルーノート・ジャパンが手がける食と音楽を融合させたモダンダイニングで、開放感のある2階建ての空間のなかで上質な音楽と料理を味わうことができる。この極上のロケーションにLittle Black Dressの音楽は完璧にフィットしていた。緻密なリズムセクション、軽やかなカッティングギター、流れるような鍵盤のタッチ……すべての音が見事に調和し、豊かなアンサンブルを奏でる。メンバー同士のやり取りはあまり見られなかったが、その分演奏で会話するような音楽的な光景が広がっていた。 こうした演奏陣の安定感は言わずもがな、圧倒的な存在感を放つ紅一点の遼のボーカルも目を見張るものがある。歌謡曲をルーツに持つ遼の歌声には哀愁のような、どこか影のある魅力が宿っている。時にエモーショナルに、時にクールに歌う彼女のその歌声に、自然と心が惹かれていくような不思議な引力を感じた。アーティスト名の通り全身を“黒”で統一したファッションも高身長の彼女のスタイリッシュな存在感をよりいっそう引き立てていた。 次に歌ったのは竹内まりや「プラスティック・ラブ」のカバー。今やシティポップの代表曲となったこの曲をLittle Black Dressが再解釈。〈氷のように冷たい女だと〉と歌うドライな主人公像が、遼のボーカルを介すとどことなく人間味を増すように感じる。途中で披露されたテクニカルなギターソロも主人公の心の内面に複雑さを与えていた。原曲の都会的なグルーヴはそのままに、楽曲に華やかさと凛々しさが加えられ、Little Black Dressでしか出せない魅力がこのパフォーマンスに表れていたように思う。 続けて歌ったのは「猫じゃらし」。Little Black Dressらしい哀愁漂うこの曲では、遼のずば抜けた歌唱力が光る。都会的かつ歌謡曲然とした佇まい、その両面を感じさせる現在のLittle Black Dressだが、そのなかにディーバの面影を見た。遼の歌手としてのポテンシャルは計り知れない。低音から高音までどの音程にも対応できる技術を持ち、歌い上げるような箇所から囁くような箇所までどの歌い方でも観客に伝わる声量と巧みな表現力を兼ね備えている。その実力は将来とんでもないシンガーになるのではないかと予感させるものだ。 「ここからは少し久しぶりの曲をやろうと思います」と前置きして披露したのは、会場のある恵比寿のの名を冠した未発表曲「恵比寿ブラックホール」。疾走感のあるパワフルな演奏をバックに、遼の歌声が熱を帯びていく。そこから「双六」「チクショー飛行」と力強いナンバーを立て続けに披露した。“歌謡ロック”を掲げるLittle Black Dressの真骨頂といった一連の流れに、思わず心と体が突き動かされる。会場のボルテージが一気に高まったのを感じた。
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