【「おもひの木」事業】取り組みの継承発展を(1月30日)
生徒会などが中心となって東日本大震災の教訓をつないできた旧新地高の「おもひの木プロジェクト」が幕を下ろす。相馬市の旧相馬東高との統合に伴い、新地町の校舎が今春で閉校になるためだ。2017(平成29)年に生徒らが自発的に始めた取り組みは、他の被災地の災害伝承事業の手本となる。統合校でも継承と発展を目指してほしい。 震災による津波で、当時の新地高の2年生1人と10日前に卒業式を終えた8人が命を失った。6年後の3月11日、亡くなった生徒9人と町内の犠牲者への慰霊の思いを込め、学校と同窓会、PTAが中庭に沙羅の木を植樹し「おもひの木」と名付けた。全校生が毎月11日前後、木の前で黙とうする活動と地域清掃を継続してきた。県内外の被災地を視察し、現地の高校生らと交流する際、新地高生が語り部となって自らの経験を伝えたこともある。「おもひの木ポスト事業」では、震災犠牲者に宛てた手紙を町民や卒業生から募るなど、地域住民の思いを受け継いできたのも意義深い。
統合後の相馬総合高は、教育方針の一つに「防災教育や震災の伝承活動を通し、地域で活躍できる力や思いやりの心を持った新しい社会を共創する人材を育成する」と掲げる。同校によると、総合探究の授業で新地校舎の生徒がプロジェクトの取り組みを示す機会を設けるなど、全校で共有を図っている途上という。 統合校がある相馬市は津波などで458人が命を落とした他、ここ数年は水害や規模の大きな地震に相次いで見舞われている。今年は元日に能登半島地震が発生し、巨大災害に備える重要性を再認識させられた。旧新地高で積み重ねた実績を礎に、若い世代が災害の教訓と備えを自分事として考える。そんな学びに発展させるべきではないか。 県と新地町などが中心となって新地校舎の活用を協議しているが、結論には至っていない。統廃合された県立高の空き校舎や土地について、県は所在市町村が利活用する際の支援策を示している。敷地に残る「おもひの木」の永続的な保存管理も含め、新地高跡が慰霊と震災伝承、古里復興のシンボルとなるような整備の在り方も検討するよう求めたい。(佐久間靖)