佐藤道郎は「8時半の男」の記録を抜くためだけに登板 まさかの2被本塁打も最優秀防御率のタイトル獲得
「オフって言われたんで、もう1週間ぐらいピッチングやってないわけ。だから『ひとりに投げるだけでいいですか?』って監督に聞いたら、『それはわざとらしいから1イニング投げや』って(笑)。それで8回、ポンポンと2アウトとったんだけど、アルトマンと有藤(通世)さんに連続ホームラン、打たれたのよ。グラブ叩きつけてさ。防御率のタイトル、パーになったと思って......」 試合前まで佐藤の防御率は1.94だった。次打者の山崎裕之を三振に打ちとり、南海は0対3で敗戦。交代完了の新記録はつくったが、佐藤は試合後のロッカーでもグラブを叩きつけた。それでも結局、防御率は2.048で、2位につけていた近鉄・佐々木宏一郎の2.054をわずかに上回って1位。先輩・宮田を超えたいと、記録のためだけの登板で「1点台を逃した」形だ。 「で、そのあと、雑誌の企画で宮田さんと対談したの、築地の料亭で。雑誌社の人が『何か先輩の宮田さんに質問ないですか?』って言うから、『ウチのオヤジが巨人ファンで』っていう話から始めて。テレビ見てると宮田さんがいつも8時半頃に出てきて、マウンドでスパイクの紐を結わいたりして、すごく間(ま)のいいピッチャーだっていう話をオヤジから聞いてたの。 だから、それを聞いたのね。『宮田さんは間のいい投手ということを学生の時から聞いてました』って。そしたらね、『オレも佐藤くんみたいにポンポン投げたかったんだけど、心臓がドキドキするんでね。それで息つくために、紐が緩んでないのにわざと直したりしてたんだ。それが見る人にとっては間がいいと』。『あ、そうだったんですか!』って」 宮田には心臓疾患の持病があり、必然的にインターバルが長くなっていた。が、そもそも心臓疾患があって先発完投が難しいため、宮田はリリーフ要員になったのだった。では、なぜ佐藤は1年目からリリーフ中心で投げることになったのか。