清水翔太人気曲5選「花束のかわりにメロディーを」「恋唄」など歌詞を徹底解説!新曲「PUZZLE」も
「花束のかわりにメロディーを」「恋唄」といった名曲が世代や性別を超えて愛される清水翔太。彼が生む音楽の特性や、歌詞の魅力はどんなところにあるのか。1年4ヶ月ぶりとなる最新曲「PUZZLE」は自身初のゴスペルソング。その歌詞に潜むメッセージとは? 【動画】PUZZLE – 清水翔太 / THE FIRST TAKE ■清水翔太とはどんなアーティストなのか? 清水翔太(読み:しみずしょうた) ・デビュー:2008年2月20日 ・デビュー作品:シングル「HOME」 清水翔太は物心がついた頃から音楽に親しみ、小学生の頃から歌手を志望。中学進学後は、学校に馴染めず自室に閉じこもるようになり、ソウルミュージックを訊き漁るようになった。この頃から作詞作曲を始めていた彼は、19歳の誕生日を迎える一週間前、2008年2月20日に自ら作詞作曲したシングル「HOME」でデビュー。 この曲を収めた1stアルバム『Umbrella』は10代のひたむきさとエバーグリーンなきらめきを湛えた作品として人気を集め、一躍、注目の的となった。続く2ndアルバム『Journey』はチャート首位を獲得し、「君が好き」というライブ人気曲も誕生。その後、『COLORS』『Naturally』『ENCORE』とコンスタントにアルバムを発表していく。 転機は2015年発売のベストアルバム『ALL SINGLES BEST』。それまではレコード会社の意向を尊重した曲作りをしていたが、同作を機に自らの人柄や嗜好、生き方が見えるような音楽性へと大きく転換。ビートメイク/アレンジ/プロデュースも担うようになり、2016年の6作目『PROUD』から2018年の8作目『WHITE』まで、時流に乗ったヒップホップ/R&Bを色濃く打ち出した。第2期といえるこの時期には「My Boo」がSNSを中心にヒット、2024年6月時点でサブスク総再生回数が2億回を超える代表曲となった。 2021年発売の9作目『HOPE』、続く2023年の最新アルバム『Insomnia』では、デビュー期の普遍的な音楽性と第2期の先進的な音楽性を融合。やりたいこと・できること・求められることを絶妙に配合しながらキャリアをアップデートし続けている。 ■清水翔太が指示される理由とは? ◎多くの人を虜にする圧倒的な歌唱力 清水翔太の歌唱力は本場の折り紙付きだ。デビュー前にニューヨークにある黒人音楽の殿堂、アポロ・シアターの『アマチュアナイト』に出演し、現地メディアから“100万人に1人の生まれながらにしてのソウルシンガー”と絶賛されたほどである。特徴はリズムに対して驚くほど後ろにのる唱法。そのときの溜めが固有のグルーヴを作り出し、そこに音程下降型の深めビブラートや細やかなフェイクが絡むとエモさが増幅。力強さや切なさ、ときには虚しさといった情感を濃厚に描き出し、心を揺り動かす。後ろ乗り唱法がよくわかるのはカバーアルバム『MELODY』(2012年)。HY「366日」や桑田佳祐「白い恋人たち」など聞き慣れた楽曲をどのように歌い表現しているか、原曲と聞き比べてみるのも一興だ。 ◎才能がぶつかり合うコラボレーション作品 親友のTaka(ONE OK ROCK)をボーカリストとして迎えた「Curtain Call」は互いの持ち味であるスタジアムロックとR&Bを掛け合わせた1曲。 Aimerとデュエットした「プロローグ」は異なる声質のコントラストが絶妙なラブバラードだ。 事務所の先輩である加藤ミリヤとは息の合ったコンビネーションを見せ、「Love Forever」を始めとするヒット曲を連発。“ミリショー”の愛称で親しまれた。 さらにシンガーソングライターの大先輩・小田和正とはクリスマス特番『クリスマスの約束2009』(TBS系)での共演をきっかけに「君さえいれば」を制作。 様々なタイプのアーティストと多様な楽曲を生み出してきたが、いずれも相手の特徴を活かした作りになっており、メロディーメイカーとしての才力を発揮している。 ◎共感性の高い歌詞 ラブソングに定評がある清水翔太だが、近年は感情のもつれ・こじれをリアルに書くことで人気に拍車。恋に悩み迷う時期のあるあるを誤魔化すことなく描き、10代・20代を中心に多くの共感を集めている。たとえば「Fallin」は、恋に落ちる苦しみにフォーカス。“恋をしてるのか 恋の真似事をしてるのか わからなくなるほど ただ君を求める夜”と欲求をさらけ出しつつ、過去の恋への未練と反省があるのに新しい人を好きになってしまった自分のチャラさに対する嫌悪感を吐き出す。 また、元カノを題材にした「Side Dish」は、新しい彼氏がいい男じゃないけど、どうしたのさ?と歌った曲。元カノだからもう関係ないけど、やっぱ心配じゃん的な男心を描きながら、“あいつが次の人なら最後は傷つくんじゃない?”と優しい忠告を投げかけ女性をキュンとさせる。恋愛のどんな場面をどう切り取るか。その着目点が細やかで、具体的な数字や例えを出しながら心の揺れ動きを描く筆致には説得力もある。翔太は当代きってのラブソングマスターと言えるだろう。 ■人気5曲歌詞解説 ◎「花束のかわりにメロディーを」 2015年リリースの20thシングル。同年に開催された『ALL SINGLES BEST』ツアーで新曲のラブバラードとして初披露され、のちにアルバム『PROUD』(2016年)に収録された。シングル発売当初はあまりセールスが振るわなかったが、オーディション番組でカバーされたり、ウェディングソングとして人気を集めるようになり、今でも多くの支持を集めるロングランヒットとなった。本人いわく、歌詞の主人公はちょっとダメな男。素敵な人と出会い、なかなか相手にされないのだが、自分が一生懸命やってきた誇れることや生涯を掛けてやりぬく一番大切なものをその人に捧げてどうにか振り向かせようとする気持ちを切々と描写していて、いわば男の告白勝負曲。“君を想ってばかりでどうにかなりそう”“君を愛する為に僕は生まれてきたよ”といった純粋で情熱的な歌詞が胸を打つ。2021年公開の『THE FIRST TAKE』ではライブを長年サポートするMANABOONが弾くピアノ伴奏でソウルフルに歌唱。以心伝心の見事なセッションを聴かせている。 ◎「恋唄」 2021年リリースの配信シングルで、アルバム『HOPE』に収録。尖鋭的なヒップホップ/R&B色を打ち出した第2期を経て、デジタル感とアナログ感を上位融合させた第3期の幕開けを飾った楽曲。初期を思い起こさせるノスタルジックでローファイなサウンドに乗せ、叶わなかった恋物語をメランコリックに歌う。“背伸びした”“いつも優しくて眩しかった” “爪を噛む癖や夜更かしも減った”という歌詞から、高嶺の花といえるような存在に恋をして、相手に似合う自分になりたくて、生活習慣を変えるような努力もしたことが伺える。“近くて遠い恋だった”ということは身近な人物だったのかもしれない。ラストでは“結局は君を救えなかった”“僕が弱すぎた”“お互いの夢の為か”と綴られていて、相手の夢を支えることができず、自分から身を引く決断をしたのだろう。その諦めがやりきれなくて、切ない。リリース直後に公開された『THE FIRST TAKE』は原曲と趣が異なるアレンジ。弦楽奏者を加えたバンド編成によるアコースティックな演奏で別れの喪失感を繊細に表現している。 ◎「Curtain Call feat. Taka」 2021年発売のアルバム『HOPE』のリードトラックとして制作。力強くてソウルフルな喉を持つONE OK ROCKのTakaをボーカリストとして召喚し、作詞作曲は清水翔太が担当。どんな立場の人でも必要とされ輝く場面があるとメッセージする楽曲で、翔太が交通整理員、Takaが清掃員に扮したMVも話題となった。社会にはスポットライトを浴びて輝く人々がいるいっぽうで、称賛されることもなく暗がりで藻掻いている人々が大勢いる。ただ過ぎゆく日々の中、“僕は居るべき場所にいない気がした”と“迷う日”もあれば、“地面を這いつくばって簡単に追い越されて納得できない”と“落ちる日”もある。それでも“感じる痛みや想いは真実だから”、歩き続けてやり遂げれば喝采を浴びるカーテンコールが待っているんだと説く。翔太は実際に感じたことをベースに作詞。現実の厳しさを交えた励ましに救われた人は多いだろうし、“君に助けが必要ならここへ来て とにかく歌うから その後もう一度歩き出せるかい まだ諦めるには早すぎるから”と寄り添う二人に優しさと思いやりも感じる1曲。 ◎「HOME」 2008年2月にリリースされたデビューシングルにして代表曲。これまでのライブやツアーでは演奏スタイルを変えながら絶えず披露されており、節目の公演では本人が涙ながらに熱唱するほど思い入れの強い曲。マイクを向ければ観客はいつでも大合唱するし、アンコールの掛け声としてサビが歌われるなど、観客との一体感を生み出す重要な1曲となっている。歌詞は実体験に沿った上京物語で、“今さら帰れないよ”という覚悟や、“今でも思い出すよ”という懐郷、“新しい僕のHOMEがここにある”という希望など、環境が変わるなかで入り交じる感情をありのままに活写。疲れたときに立ち戻れる心の安息地としてのHOMEや、新たな一歩を踏み出す勇気をくれる心の支えとしてのHOMEなど、誰しも一度は味わったことがあるだろうHOME体験を10代にして見事に描ききった才能に改めて驚かされる。 2024年10月18日に公開された『THE FIRST TAKE』では、なぜ今この曲をパフォーマンスしたか、理由を説明。本人によるピアノと馴染みのメンバーによるバンド+コーラス隊、さらに弦楽カルテットを加えた豪華な編成による熱のこもった演奏になっている。 ギターに関しては主にアコースティックギターを使用していて、原曲を感じさせるアレンジを残しているところにも注目だ。 ◎「My Boo」 2016年リリースされた22枚目のシングル。オートチューンを全面使いし、時流に即したR&Bサウンドを取り入れた意欲作で、同年開催の『PROUD』ツアーの最中に制作され、続くアルバム『FLY』に収録された。タイトルのMy Booは、恋人や愛しい人を親しみを持って呼ぶときのスラング。歌詞には若いカップルが互いに支え合いながら成長していく物語が男目線で綴られている。“僕”ではなく“俺”という一人称を使い、主人公が恋の行き先に対する不安や不器用さも隠すことなく伝えているところがリアリティーを生み、男性から多くの支持を獲得。また、“僕がアラジンなら君はジャスミン”というスウィートな言い回しも若年層に受け、このフレーズを使った恋人との写真や動画もSNSに多く投稿された。この曲がヒットしたことで清水翔太の新たな活路が開かれたといっても過言ではない1曲。LINE MUSIC発表の『4年間で最もプロフィールに設定されたBGM設定ランキング』『4年間で最も聴かれた楽曲ランキング』では「My Boo」がそれぞれ1位、2位を獲得した。ちなみに、“俺はジーニー”というフレーズが出てくる2019年リリースの「Sorry」は、この曲の続編とも取れる内容で、「My Boo」のリリックをセルフサンプリングしている。 ■『THE FIRST TAKE』で披露された新曲「PUZZLE」 ◎「PUZZLE」が見せた新しい清水翔太 “今さら帰れないよ”。デビュー曲「HOME」でそう歌ってから16年。2024年10月9日にリリースされた新曲「PUZZLE」もまた、HOME=自らの原点に対する思いが入り交じって生まれた楽曲だ。 中学時代のいじめ体験から故郷と距離を置いていた翔太は今年3月、18年ぶりに制作拠点を地元の大阪に戻した。その1つの契機となった出来事は昨年1月に遡る。最新アルバム『Insomnia』の制作中、スランプに陥った彼は、自分がやりたいことを見つめ直すため帰郷。久々に同級生と顔を合わせ、母校であるキャレスボーカル&ダンススクールの同期とも酒を酌み交わした。そのときに感じたことを書き記した「Memories」(『Insomnia』収録)は、「HOME」で“心にしまっておくべき”と歌ったことを打ち明けたような心の雪解けソングだった。 そんな経緯から今年に入ってキャレスで特別講師を務めるようになった彼が、母校におくるテーマソングとして書いたのが「PUZZLE」だ。楽曲にはスクールの生徒らがボーカルやコーラスで参加。R&Bやラップの要素を採り入れた、翔太初のアーバンコンテンポラリーゴスペルとなっている。歌詞のテーマは「夢」。夢に向かって頑張ろう!と安直に励ますようなお安いメッセージソングではなく、“まるでおとぎ話”“叶えられなかった夢の置き場所”など、現実の厳しさや夢の儚さにも言及しているところが翔大節だ。 最大のポイントはサビに出てくる“夢の破片”という言葉。欠片ではなく破片と書くことで夢に破れて砕け散った様子を表したかったのだろう。歌手やダンサーとして活躍することを夢見て入学しても、その夢に辿り着ける子は一握りしかいない。失敗して挫折して諦めて、夢に破れる者たちは大勢いる。ときに競い合い、共に笑った仲間とも別れのときが来る。そうしていなくなった者たちの破れた夢が積み重なっていく。そこで翔太は“夢の破片を集めてパズルのように埋めていく”と歌った。それはつまり、いなくなった者たちの思いを忘れないということ。共に過ごした時間を胸に刻んでいくということ。夢の破片のひとつひとつが夢をかなえるピースになるんだと自らにも伝えたかったのだろう。 夢のパズルは音楽に限らない。スポーツ、ビジネス、どんな世界にだって存在する。大人になってから夢を追いかけている人もたくさんいるはずだ。今回の「PUZZLE」は、夢の尊さや在り方を伝えながら、夢を追うすべての者たちの共感を誘うエールになっている。なにより翔太自身が前を向いて歌い続けることを祈り誓った楽曲だと言えるだろう。ゴスペルは魂の救済を願って生まれた祈りの音楽。翔太が心が安らげる場所=HOMEで、ルーツミュージックであるゴスペルに向き合って書き上げた「PUZZLE」は、とてもパーソナルで超普遍的な甘苦いソウルミュージックなのだ。 ◎『THE FIRST TAKE』での「PUZZLE」 新曲「PUZZLE」の『THE FIRST TAKE』は、今回の楽曲にキャレスの面々を迎えた経緯を翔太が説明するところから始まる。収録に参加した母校の生徒はソロパート8名とコーラス12名の計20名。そこにアコースティックギターとキーボード、弦楽カルテットによる6人編成の生演奏と翔太が加わり、『THE FIRST TAKE』史上最多人数となる総勢27名で生演奏が繰り広げられる。スペシャルアレンジとなった今回の『THE FIRST TAKE』では、原曲と異なり、二番の歌いだしのラップを翔太が担当。その翔太はフロントに立ちながら時折、ソロパートを務める生徒たちと目を合わせながら歌い紡いでいく。 生徒たちを力強い歌声で引っ張りながら、温かく見守る翔太の柔らかな表情が印象的。そんな翔太と心を通わせ、ソロパートを務める生徒たちはそれぞれに美しい歌声を披露。コーラス隊も12名とは思えないほど厚みのあるハーモニーを響かせる。注目は、翔太や生徒たちが次々にソウルフルなフェイクを披露する終盤のサビ。ここでグッと空気が変わり、スタジオの熱が明らかに高まっていく。翔太が“Everybody!”と煽って盛り上げるラスサビの一体感と高揚感は鳥肌モノ。夢を合言葉に世代を超えて集まった翔太と生徒たちの絆が生んだパワフルな歌声とパフォーマンスを、ぜひあなたの目と耳で感じて欲しい。 ■清水翔太の最新情報をチェック! デビュー15周年を経て、今もなお新しいチャレンジを続ける清水翔太。音楽が人生といえる彼にとって、制作環境すら変えた今は、人生にとっても転機のとき。彼が今後、楽曲にどんな人生観を刻んでいくのか、注目して欲しい。 TEXT BY 猪又 孝
THE FIRST TIMES編集部