知られざる歴史をひも解く 特別展「始皇帝と大兵馬俑」
知られざる歴史をひも解く 特別展「始皇帝と大兵馬俑」 THEPAGE大阪 撮影:北代靖典
秦の始皇帝はいったいどんな人物だったのか? 名前は知っていても詳しく知らない人もいるだろう。ましてや子供ならなおさらだ。現在、特別展「始皇帝と大兵馬俑」が、大阪の「国立国際美術館」(北区中之島)で開催されているが、このほど展覧会の関連イベントとして「親子向けミニ・レクチャー」が行われた。 始皇帝はなぜ8000体もの兵馬俑を作らせたのか?
「親子向けミニ・レクチャー」は国立国際美術館地下1階講堂で行われ、始皇帝や兵馬俑(へいばよう)にまつわる歴史や、展覧会を見るための注目ポイントについてクイズを交えながら学んでいくというものだった。講師は同館主任研究員の安来正博氏が務めた。兵馬俑は兵士や騎馬将軍をかたどった俑で、俑とは中国で副葬品として用いられた人間を模した像のこと。 特別展「始皇帝と大兵馬俑」では、始皇帝と秦王朝にまつわる貴重な文物約 120 件を紹介している。紀元前221年、始皇帝は競合する国々を滅ぼして中国大陸を初めて統一し、貨幣なども統一をはかり、新たな支配体制を確立した。「永遠」を守るため、生前より自ら巨大な陵墓を造らせ、そのほど近くに約8000体もの陶製の軍団「兵馬俑」を埋めさせた。そして1974年に発見されると、秦王朝の知られざる歴史が次々と明らかになり、大きな驚きとなった。 始皇帝陵は、「仁徳天皇陵」(堺市)と「クフ王のピラミッド」(エジプト)とともに、「世界三大陵墓」のひとつ。 本展は、20 世紀の考古学で最大の発見とも言われる兵馬俑のなかでも選りすぐりの 10 体を揃え、その造形美をじっくり鑑賞できるばかりか、記念撮影のできるエリアも設けられている。 写真を撮っていた中年夫婦の女性は、「始皇帝って貨幣の統一とかいろんなことをやってたんですね。兵馬俑もすごい迫力あります」と、話してくれた。
本展では最新の発掘成果を採り入れながら、始皇帝が空前の規模で築き上げた「永遠なる世界」の実像に迫っている。見どころは、圧巻の軍団・兵馬俑、発掘品で読み解く始皇帝の夢、さらに秦王朝のサクセスストーリーだろう。 青銅器や金銀器、土器の展示では、小国だった秦が天下統一に向けて成長していく過程がわかる。巨大な建材や壁画、水道管などの発掘品の展示では、壮大なスケールを体感できると同時に、その作品を通して始皇帝の夢を読み取ることができるだろう。 そして最大の見どころは、「将軍俑」「騎兵俑」など秦軍の陣容に迫る作品に加え、「馬丁俑」や「雑技俑」などバラエティー豊かな兵馬俑だ。展示会場に再現された「兵馬俑坑」では、「軍団」としての兵馬俑の臨場感あふれる圧倒的迫力に目を奪われる。 それにしても、秦がいかにして巨大帝国になったのか。500年以上にわたる波乱に満ちたダイナミックな歴史ドラマは興味深い。特別展は10月2日まで。詳しくは展覧会公式サイトで。 (文責/フリーライター・北代靖典)