<カープ若手育成論>「由宇練習場は〝安部友裕〟という選手の原点」OBが語る二軍育成の現場
現役時代は二軍で長い下積み生活を送った後、一軍で活躍した元カープ・安部友裕氏。大野練習場、由宇練習場で汗を流してきた安部氏に、カープ二軍の現場で学んだことを語ってもらった。(全2回・前編) 【写真】カープ大野寮の寮長を務める道原裕幸氏 ◆由宇練習場で積んだ鍛錬の日々。礎を築き上げた場所 カープで15年間現役生活を送りましたが、二軍でプレーする期間も長くありました。若手の頃から、ベテランと呼ばれるようになってからも二軍を経験しましたが、感覚は全く違います。若手の頃は必死で練習をして一軍を目指します。逆に、一軍を経験してベテランになり、二軍でプレーしていた頃は、自分の事だけを考えてプレーはしていませんでした。なぜなら周囲は若手選手が大半なので、見られていることを意識していました。『安部さんはこういう考えなんだ。こういう練習をしているんだ』と、若手は見ています。彼らの模範になる意識で二軍で過ごしていました。『ちょっと一軍で活躍すれば、これでいいんだ』と若手に思われたら、カープは良くなりませんからね。 二軍選手は由宇練習場で鍛錬を積み、試合を重ねます。僕にとってこの場所は原点と言えますし、いろんな苦労や苦悩があった場所です。いわば、安部友裕という選手をつくり上げた礎です。 由宇練習場はグラウンドも広いですが、思い出深いのは球場の近くにあるサブグラウンドです。ここでノックを受けましたし、二軍の試合に出ないときはここで打撃練習をしていました。そういう下積みがあって、現役当時の安部友裕という選手が出来上がっていきました。 二軍で練習を重ねる上で、一番ダメな事が『二軍慣れ』です。 たとえば、『今自分がこういう状態だから一軍に上がりたくない』だとか、二軍で活躍して良い結果が続いていると『今の環境、状況が心地良いな』と感じてしまうこと、これが二軍慣れです。人はどうしても慣れが出てきますが、二軍に慣れてしまうことは選手として一番怖いことです。 生活面で言うと、若手選手は大野寮で暮らしています。僕にとっては高卒でプロ入りして最初に暮らした場所です。 高校時代と違うのは、時間に自由があることでした。社会人としての基本も教えていただいた場所ですし、人としての基盤を形成してもらいました。そして大野寮といえば食事です。すごく美味しくて、たくさん食べましたが、料理長から「今までいろんな選手を見てきたけど、一番食べているのは嶋(重宣・現西武コーチ)か安部ちゃんだね」と言われたこともありました(笑)。現役時代、体を大きくするためにとにかく食べました。夏は食べても食べても痩せてしまっていたので、食事トレーニングではないですが、大野寮の美味しい料理をたくさん食べさせていただいた思い出があります。 (後半へ続く)
広島アスリートマガジン編集部